【書籍発売記念SS】ダンス特訓、再び……!

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2024/6/14、夜逃げ聖女がビーズログ文庫より発売されました!

記念SSをWEB限定で公開します♪


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レギト皇国でカサンドラ様達の不正を暴き、私は晴れて『ログルムント王国の聖女』となった。来月には、とうとうディオン様との結婚式。仕事に生活に充実している今の私は、幸せ過ぎるくらいに幸せだ。


……しかし。

再び重大な問題が生じてしまった……!!


「ダンスパーティ!? またですか、ディオン様!」

素っ頓狂な声を上げた私を見て、ディオン様はふしぎそうに首をかしげている。


「そうだよ? 冬華祭は国中の貴族が集まる冬の宮廷行事で、当然ダンスだってする」

「一年に何回宮廷行事やるんですか!?」


「いや、まぁ、数えるのが面倒なくらい沢山。そういうお国柄なんだよ。俺も今までは面倒だからほとんど顔を出さなかったが……今の俺には君がいるからな。聖女兼王弟妃のお披露目も兼ねて、出席しようかと」


やたら嬉しそうな顔で、ディオン様はそう言ってきた。


「……むぅ」

王弟妃として最低限の宮中行事には、ディオン様と一緒に参加する約束だけれど。なんか最近、イベント目白押しな気が……!


「無理に誘ったりはしないが。それじゃあ、今回は俺達欠席するか?」

「……いえ、それも失礼なので参加します。でも私、本当にダンスが苦手なんですよ。ディオン様も知っているでしょ?」

「そうかな。ちょこちょこ動くエミリアは、すごく可愛いぞ」


……またそういうこと言うんだから。ディオン様ってば。


私が頬を熱くして黙り込んでいると。ディオン様はふと何かを思い出したように眉をひそめた。


「……だが、今回のダンスの演目は少し難しいんだよな」

「えっ」

ディオン様は言った――今回の演目である『ガイヤルド』というダンスは、高い技術と体力、そしてリズム感が求められるのだと。


「ジャンプや複雑なステップが緩急豊かに織り交ぜられたガイヤルドは、とてもじゃないが即興ではムリだ。事前にしっかり練習しておこう。……ということで、今回もをこの2人に頼もうと思う」


やたらと楽しそうな顔をして、ディオンは見本役を連れてきた――前回同様、ザハットとダフネの二人を。


「この2人に今からダンスを頼むから、メアリはよく見ていてくれ」


「またダフネとザハットさんにお願いするんですか!? ふたりとも出来るんですか、ガイヤルドって難しいダンスらしいけど!?」


ザハットは生真面目な表情でうなずいている。

「無論、可能だ。ガイヤルドもサラバンドも獅子舞シィズゥ龍舞ロンウーも、洋の東西を問わず四十種類ほどの舞踏は心得ておる」


「す、すごいですねザハットさん。じゃあ、ダフネも大丈夫?」


何でもできるダフネなら「無論可能です」……と即答してくるに違いないと思っていたのだけれど。なぜかダフネは、少し気まずそうに口をつぐんでいた。


「どうした、ダフネよ。さぁ参るぞ」

ザハットさんがやる気十分で手を差し伸べている。けれど、ダフネは乗ってこなかった。


「………………私は遠慮しておきます」


「「え?」」

と言ったのは、私とディオン様だった。ダフネなら何でもこなせるだろう――とディオン様も予想していたに違いない。


「私ではザハット殿の足を引っ張ることになるかと。恐縮ですが、今回の見本役はディオン殿下とザハット殿でお願いできますでしょうか」

「あ、あぁ……わかった。悪かったな、ダフネ」

意外そうな顔をしながら、ディオン様はそう言うとザハットさんと見本のダンスを踊り始めた。



男性二人がペアになってダンスするのは、なんというか妙だった。


「おい、エミリア! 笑ってないでちゃんと動きを見てろよ? あとで、エミリアが躍るんだからな」

「わかってますって。……ふふ」


ついつい、笑みがこぼれてしまう。私は、隣のダフネがじっとザハットさんを見ていることに気付いた。

ダフネの表情は真剣で、何を考えているのかちょっと読み取れない。……でもなんだか瞳が輝いているような、頬がほんのり赤いような、そんなふうに見えた。


(………………ダフネもしかして、ザハットさんのこと好きになっちゃったんじゃない!? だから恥ずかしくて手を握れない……とか!?)


ふと、そんなことを思ってしまい、なぜか私が赤面してしまった。

「? どうしたんですか、エミリア様。のぼせたんですか?」

「ち、違うよダフネ。えっと……」


うろたえている私を見て、ダフネは首をかしげていた。



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最新作『望まぬ結婚をさせられた私のもとに、死んだはずの護衛騎士が帰ってきました〜不遇令嬢が世界一幸せな花嫁になるまで』

こちらもぜひお楽しみください♪

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