第16話 重戦士と恐怖の野菜
「「ごちそうさまでした」」
空になった食器を前に一花とリクトで手を合わせる。
「ん〜! やっぱ具沢山の豚汁って最高だった〜!」
自画自賛しながら、一花は食器をシンクに運んでいく。
「豚肉、人参、大根、牛蒡、蒟蒻、油揚げ、玉葱、豆腐、じゃがいも。今回はじゃがいもでしたが、豚汁に入れるお芋は里芋や薩摩芋も美味しいんですよ」
「ほほぅ」
「まだお鍋にいっぱい残ってますから、明日はうどんと卵を落として豚汁うどんにしましょう」
「一花殿は何にでもうどんを入れるのだな。カレーの時もそうだった」
「お蕎麦も好きなんですけど、うちの冷凍庫、何故か冷凍うどんの在庫率が高いんですよね」
何故かも何も、自分が買い置きしているからなのだが。
「カレーといえば。豚汁にカレー粉やルウを入れると和風カレーになりますよ。スパイスの刺激とお味噌のまろやかさの調和が絶妙です」
「包容力ありすぎだな、カレー」
狭い台所に二人で立って、一花が洗った皿をリクトが布巾で拭いて食器棚に戻していく。
夕飯の片付けが終わると、一花は「あ、そうだ」と思い出して、洗って干してあったプリンのプラスチックカップを取り出し浅く水を張り、その中に人参のヘタを入れた。
「何をしているんだ?」
「水栽培です」
首を傾げる全身甲冑に、女子高生は説明する。
「こうやって人参のヘタを水につけておくと、葉っぱが伸びてくるんですよ。育った葉は炒めたりお味噌汁に入れたりして食べます」
最近野菜が高いからと笑う一花に、リクトは鎧の肩をビクリと震わせて、
「大丈夫なのか? 部屋で野菜を育てるなど」
「毎日水を替えて日当たりのいい場所に置けば、ちゃんと芽が出ると思いますよ」
一花の答えに、リクトは怪訝そうな声で訊き返す。
「……危険ではないのか?」
「はい??」
「収穫前の野菜は、歩き回ったり、奇声を発したり、
「……どんだけアグレッシブなんですか、トツエルデの野菜は」
地球の野菜は自走しなくて良かったと心から思う。
「まあ、この部屋には剣も盾もあるからな。育てた野菜が襲いかかってきても俺が制圧するから安心してくれ」
「そんなホラーな展開にはなりませんから、料理する時は手伝ってくださいね」
こうして今日も、篁家の平和な一日は過ぎていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。