第2話

 今日は1番嫌いなバレーの授業がありました。バレーは私のような陰キャには中々にハードなスポーツです。なので私はすでに汗だくになってしまいました。


「伊月ぃ!ナイス!」

「伊月うまっ!」


 一方あの変態ギャルは運動もお手のもの。かなり機敏に動き、トスも焦り一つなく軽やかに動いていました。


「あっ!やば!」

「へ?」


 次の瞬間、私の視界はボールによって塞がれるのでした。




「はぁ…いたた…」


 結果鼻血は出ましたが軽傷なので1人で保健室に行き、治療もしてもらいました。幸い鼻血はすぐに治りましたが既に授業終了のチャイムがなっていたので急いで更衣室へ向かいます。


「すー…」


 今はまだ涼しい時期なので長袖は着ていますが半袖は着込んでいません。なのでさ程着替えに時間はかからないはずです。


「ん、はー…」


 ところでこの変態は何をしているのでしょう?私の制服のシャツに鼻を押し当てて深呼吸をしているようにも見えます。というか少し口に含んでいるような気がするんですけど?


「あの…何してるんですか?」

「ひゃっ!」


 『ひゃっ!』じゃないんですよ。どう考えても私のシャツの匂いを嗅いでましたよね?


「あ、あー…鼻血大丈夫だった?」

「大丈夫です。ところで何をしてるんですか、と聞いているんです」

「うぇ?!あ、あーいや…別に!?紗奈たんの服の匂いを嗅いていたわけじゃなくてさ?これ誰のかなぁ?って思って!」

「私以外いないじゃないですか。あと名前書いてあります」

「あ、あは!おっちょこちょいなもんで!」


 この女、絶対にわざとである。あれですかね?臭い香りほどちょっと嗅ごうとしちゃうみたいなあれですかね?体臭には結構気を使ってる方なんですけどね。普通に恥ずかしいです。


 さっさとギャルから制服を取り返し、手早く着替えます。時間にして1分もかからない内に着替えました。


「はぁ〜…ん、やばっ!めちゃ良い臭い…」

「返してください!」

「あ、あぁ…私のエネルギーの源…」


 最っ悪!汗をかいた後の体操服の臭いを嗅がれるなんて……


「もうお嫁に行けない…」

「ふへ!?あ、安心して、紗奈ちゃん!私がお嫁に貰う!カモン!!!!!」

「1番安心できないですよ!」


 本当に油断も隙もない方ですね。今だって回収した使用済み体操服を羨ましそうな目で見てきます。


「む〜……あ!紗奈ちゃん、ほっぺに血がついちゃってるよ」


 そう言うと彼女は私の頬に手を伸ばし、私の顔を両の手で挟み込むと顔を近づけてきました。


 ぺろっ


「はい!これでとれた!あは、なぁにそんな可愛い顔しちゃって♡」

「は?」


 今、舐めた?私のことを(物理的に)舐めた?


 起きた出来事を認識した瞬間に身体の穴という穴からぶわわっと何かが溢れてきました。


「最っ低!ムードも倫理観も最悪じゃないですか!」

「ふぇ?!あっでも紗奈ちゃんになら怒られても全然っていうか、むしろ嬉しいっていうか…」

「変態っ!!!!!!!!」

「あはんっ♡」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る