第63話 仲間割れ禁止

「それを探しに行きましょう。私、思うんだけど、二組の分かれて、一つはバナナ探し、あともう一組は村で暮らすのはどうかしら」


「「「村で!」」」

 いくつかの声が重なってかまくら内に響いた。


「そう、バナナが見つかって侯爵様が記憶を取り戻したとしても、あの方の事だからこの貧しい村を捨ててはおけないわ。その時の為に少しでも村を改善するのはどうかしら。実際、ここはウエールズ領ではないわよね。隣のガイール領なのね。隣の領地へ口出しは出来ないと思うけど、私も少しここで暮らしてみたらどうかと思うの。私は村で暮らす。カリンおばちゃんと誰かバナナを探しに行ってもらってもいい?」


「そうですね、では私はバナナを探しに行きますので、あとの者は残ってリリアン様のお世話と警戒を」

 とオラルドが言った。

 オラルドが行くのは妥当だと思う。

「そうね、ヤトも行ってちょうだい。ヤトに乗っていけば早いでしょう」

 ヤトはかまくらの中には入っておらず、入り口を塞ぐように外で座っているが尾の先をひらひらと振って了解みたいな返事をした。

「ダゴン氏、アラクネ、リリアン様とサラの警護を頼む」

 とオラルドが言い、おっさんは「よっしゃ、まかせとけ」と言い、アラクネは「あたしもバナナ探しに行きたいんだけどぉ。役に立つと思うんだけどぉ」とオラルドの腕に自分の腕を絡めて甘えた声で言った。

「アラクネさん! あなたはここでリリアン様を守るんです!」

 と言ったのはサラで、口をへの字にしている。

「なによぉ。いいじゃない。元々バナナの話をしたのはあたしじゃん~あたしもバナナ探索に行きたいわぁ。ね、いいだろう? オラルド」


 オラルドはちらっとサラを見てから、アタクネに冷たい視線を投げて、

「あなたはここでリリアン様を守るのです。闇に身を潜め、村中を警戒出来るのはあなたしかいませんから。いいですか、全ての村人に耳を傾けているのですよ」

 と言った。


「ちぇ、つまんない、バナナ探しの方が面白そうなのに。あ! じゃあ、ちゃんとリリアン様を守れたらあたしだってご褒美が欲しいよ。久しく人間に触れてないんだよお。若い男のエキスくらいくれたっていいだろ? 喰うわけじゃない、ちょこっとね」

 とお色気むんむんのアラクネが言った。

「何を言ってるの! あなた!」

 とオラルドとアラクネの間にサラが割って入り、アラクネを睨んだ。


「あんたに関係ないじゃん。なに、それ、ヤキモチなわけ?」

「そ、そんなはず……ありませんでしょう!」

「あんたこそ何の役にも立ってないじゃん。リリちゃんは偉大な魔術師なんだし、あんたが森で薬草摘むくらいじゃ何の役にも立ってないって事分かってる?」

「そ、それは」

「火を熾すのも、魔物を捌くのもみんなオラルドじゃん。毒だー何だーって状態異常もリリちゃんが予防してくれてるの知ってる? 体力回復だってそうさ。そんで疲れたらヤトに乗って運んでもらってさ」


「アラクネ!」

 と私はアラクネのマシンガントークにストップをかけた。

「何よぉ」

「やめてちょうだい! あなたがオラルドについて行きたいならそれでいいけど、サラをどうこう言うのはやめて。私たちは仲間よ。みんなで侯爵様を必ず見つけるという信念に基づいて行動しています。故意に仲間割れをするような者はいらないわよ?」

 アラクネはちぇっと口を尖らせたが、

「分かったよぉ」

 と言った。

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