第37話 妹キター

 侯爵からの返事はすぐにドゴンおっさんと妹が運んで来てくれた。

「リリちゃん、よろしゅうに。あては妖精王ウィン一族の長女でカリンや」

 お、おばちゃんきた。

「まあ、よろしくね、リリアンです。お兄様達にはお世話になってるわ」

 と言うとおばちゃんは「そやろ? 兄様は頭がええし、人間とも上手にやってける凄い妖精なんや!」

 と嬉しそうに言った。

「あなたたち、本当に仲が良くてうらやましいわ」

「なんや、リリちゃん、兄弟はいてへんのか?」

「兄がいるけど、私は嫌われてたから馬鹿にされてよくいじめられたわ」

「う……ぐ……可哀想になあ、苦労しはったんやなぁ。おばちゃんに何でも言うてな……相談にのるからな」

 おばちゃんて、自分で言ったわ。 

「そんでな、これ、侯爵様からの手紙や、甘い甘い匂いするから、きっとらぶれたーってやつやで、ええなぁ、りりちゃん」

 とカリンおばちゃんが封筒を渡してくれた。

「ありがとう」

 

 侯爵家の事は私のいいようにと言ってくれた。だけど死霊王討伐については助力を断られた。

 戦いの経験はないけど、私の持つ聖魔法が効果があるならば同行したいと申し出たのだが断られた。

 王都には聖女なる方がいるし、教会に属する聖魔法師が大勢いるからという事だった。

 それにS級の冒険者達も大勢参加するらしかった。

 素人の私の出る幕ではないかもしれないが、死霊王討伐は不安しかなかった。

 それでも侯爵がそう言うならば仕方ない。

 まさか追いかけて行くわけにも行かないし。

 

 だから私は私に出来る事を少しずつやっていこうと行動を始めた。


「なるほど、分かりました。ガイラス様からも言伝をいただております。奥様のいいようになさってください。教会の件は承りました。至急、業者を呼んで工事にかからせましょう」

 とオラルドが言ってくれたので、頼もしい。

「ありがとう、お願いするわ」

 書斎でそんなことを話していると、ようやく起き出してきたノイルが、

「工事だと? 何の話だ。私は何も聞いていないぞ」

 と口を出してきた。

「デールの街の教会を修復する件ですわ。あの教会には孤児がたくさん面倒を見てもらっています。ですが寄付だけで賄うのは厳しい現状、領主としてそういう事業にも関わるべきですから建物を修復をするのですわ」

 そう言うとノイルは、

「そんな事は必要ない。兄が留守の今、私が領主代理として教会修復など認めない」 

 と言った。

 頭、おかしいのかな?

「あなたに仕えていたクラリスやコックも教会から来たのですよ? 今いる子供達にも彼らみたいに働ける場所を与え、未来へ導いてあげるのが領主の勤めではないのですか? 私の言ってること、分かります? 分からなかったらもう少し優しく言いましょうか?」

 横でオラルドがぷっと笑った。

「うるさい!」

 ノイルが手を振り上げて私を叩こうとした。

「その手をどうするおつもり?」

 一瞬、腕を氷らせるか燃やすかしてやろうか、と魔力が高まってしまった。

「何かうまそうな魔力を感知したから来たんだけど」

 と天井からアラクネがぴょんと糸にぶら下がって降ってきた。

「わああああ」

 少しだけでかい赤い蜘蛛にノイルは悲鳴をあげて逃げて行ってしまった。

「全く、あの方がガイラス様とご兄弟なんて信じられないわ。まあいいわ、ガイラス様の許可はあるのだし、続けましょう」

「そうですね」

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