メンタル強男の寝取られ成り上がり譚(本編完結済み

いちぱ

第1話メンタル弱男は彼女が寝取られてました…

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文章を書くのが完全に初めてで、ラノベなども読んでこなかったのですがネット小説を読んで自分でも書いてみたくなったので挑戦してみました。お手柔らかにお願いします!

野球の知識はパワ◯ロとプロ野球だけです。変なところがあったら教えてください。

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「ボール!フォア!」


審判の声が大きく響く。


「ハァ…ハァ……」

「すみません、タイムいいですか?」


審判の人に声をかけて、キャッチャーをやっている中学からの親友の名鳥なとり ゆうがこっちに近づいてくる。


「落ち着け千尋!まだ回も中盤でこっちが勝ってるんだ!1、2点取られたってまだ大丈夫なんだから!」

「ハァ…ごめん勇…やっぱりランナーがでるとどうしても気になっちゃって…」


二人で話しているとサードを守っている後輩も近づき声をかけてきた。


「すみません藍川先輩…俺がエラーなんてしたから…」

「いやエラーはしょうがないよ。それよりもランナーが一人でただけでこんな荒れる僕が悪いんだ…」


僕こと藍川あいかわ 千尋ちひろは今まさに一人で試合を壊しかけている、白砂しろすな高校野球部の3年でエースピッチャーだ。

去年の3年生の引退の時にエースナンバーをもらって今まで投げてきているのだが、こんな風に荒れてしまうことが1回や2回ではない。

自分で言うのもなんだが僕は割と知名度のある高校球児としてここまでこれている。アマチュアの野球選手を評価し、まとめているサイトなどにも名前が載っているほどだ。

そしてそこにはいつもこう書かれている。


『投げる球は一流。投げる姿は歴代の大物球児を彷彿とさせる貫禄がある。しかし”心”がガラスのエースである。メンタルの強化が最優先課題。評価B+』


そう、僕はメンタルがクソ雑魚である。今も味方のエラーで出したランナーがいるというだけでこの様である。

すでに2アウトながら満塁、二人もフォアボールで出していて、完全に自滅の形である。

いつもこうなってしまう。ランナーがでただけで自滅、相手の選手の迫力に負け自滅、観客の目線に耐えきれず自滅。

投げてる球はいいんだからいつも通りにやれ、観客なんて気にせず相手だけを見てろ等など、色々な人にアドバイスをもらってきたがここまで成果がでたことはない。

1、2年生の時も試合を任されることは多々あったが、崩れても先輩ピッチャーが頑張ってくれたし、それに支えられ、崩れる前になんとか投げきれることもあった。でもその先輩達も引退して、自分が最上級生。ついにエースナンバーなんて背負わされてしまったがゆえ、僕の心はもうボロボロである。


「今日はただの練習試合だ。そこまで気負う必要はないんだ。それに落ち着いている時のお前の球を打てるような相手じゃない。とにかくストライクゾーンに投げてくれよ。」

「わかったよ…ごめんね勇…ありがとう…」

「先輩あと1アウトですよ!頑張っていきましょう!」


そうして二人は僕から離れていった。

手が震えている。タイムを取ってまでかけてくれた言葉を頭の中で反復しながらキャッチャーの出すサインを見つめる。

まだ4月、季節は春だ。昼でも暑いということはないはずなのに額からの汗が頬を伝う。

目にかかった前髪の間からサインを確認して、僕は腕を振った。




「はぁ…今日も駄目だった…」


練習試合を終え、ミーティングも終わり、一人で家に帰る準備をしていた。

結局今日の試合も途中で降板、後輩にピンチを任せる形で終わってしまった。


「どうして僕はこんなに駄目なんだろう…」


メンタル弱男が一人になったら弱音しかでてこない、励ましてくれた親友も後輩も帰ってしまった。

憂鬱な気持ちで帰り支度をしているが、この後はいつも応援し、試合も見に来てくれていた幼馴染で恋人である涼木すずき そらと一緒に帰る約束をしている。

いつも試合を見にきてくれているというのに、ここ最近は碌な試合を見せられていない。それでも毎回見に来て声を出し応援してくれる彼女には頭が上がらない。

中学2年の時に彼女から告白され、家族同然に育ってきた彼女のことを自分も好いており、喜んでOKをした。

それからは野球をやってる僕をいつも支えてくれ、幼馴染としても恋人としても良好な関係を結べていた。

家が隣で親同士も仲がよく、将来は


「ちぃがプロ野球選手になって、空はそれを支える妻になってくれたら嬉しいな。」


なんて話も両方の親同士で話したりしていて、それを聞いてる空も頬を赤らめながら嬉しそうに聞いていた。

僕も今のところは空以外の女子が気になったりしたことはなく、このままの関係が続いて結婚まで出来たら…なんて思ってたりもしていた。

でも今のままじゃプロ野球選手なんて夢のまた夢、それどころか空にも愛想を尽かされ別れを切り出されてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしている。


「はぁ…いつまでもウジウジしてても仕方ない。空と一緒に帰ろう…」


携帯に空から連絡がないかを確認し、なかったのでこちらから連絡する。


『ミーティング終わったよ、帰る準備もできたよ』


そう連絡し、チャットアプリを見つめる。

いつもならすぐ既読が付くが今日はなかなか付かない。

もしかしたら校庭のほうで待っているのかもと思い、荷物を持って外にでた。




「うーん…どこにも見当たらないなぁ。」


いつも待ってくれている場所や、よく友人とダベる時にいる場所など、探しては見たが見つからない。

チャットアプリも確認してみるが既読はまだついていない。今日来ていることは確認しているし先に帰るなどの連絡もない。

他の部活をやっている友達にでも捕まっていて連絡に気づかずに話し込んでいるのかも知れない。

一旦荷物を置いて少し待ってみようと思ったのだが、ここで尿意に襲われ、先にトイレに行くことにした。

すれ違うと困るのでちゃんと連絡もしておこう。


『連絡もないし心当たりのある場所も探してみたんだけど見つからないよ。ちょっとトイレに行ってくるからもし気づいたら待っててね。』


これでひとまずすれ違って帰ってしまうことはないだろう。もしかしたら観戦途中で具合でも悪くなってもう家に帰って寝ていたりするのかも知れないし。

トイレに行って少し待ってみても既読が付かなかったら帰ってしまおう。

そう思い、外にある部室棟の横にあるトイレに向かうと話し声が聞こえた。


「はーいつもいつも…お前の彼氏はどうなってんだよ。あんなんじゃ夏の大会も絶対勝てねぇじゃねーか!」

「うん…ごめんね…でもちぃも頑張ってると思うんだ…もう少しでいいから支えてあげて…」

「そりゃ、あいつに勝ってもらわないと俺の夢のプロ野球人生が遠のくんだからしっかりやるけどよぉ…一人で勝手に自滅してるだけだから支えるもなにもねーだろ!」


トイレの裏の方から親友の声がした。いつも聞くような口調とは違い荒々しく、声もでかい。

そりゃいつもこんな試合してたら怒りたくもなるよな…と自分を情けなく思いつつも自分を彼氏と呼ぶ人物は一人しかいないのでその話し相手が空であることに気付いた。

空は子供の頃からの幼馴染で、勇は中学からの付き合いなので二人は普通に知り合いだ。親友と彼女の話し合い、それが自分のせいだと思うと情けなくて涙が出そうだった。


「まぁとりあえず帰ったらうちに来いよ、今日は親両方ともいねぇからよ!たっぷり可愛がってやるよ!」

「ちょっとこんなとこでそんな話しない…んっ…んむぅ…」



さっきまで出そうだった涙なんて一気に止まり、冷や汗がでる。

なんだ今の会話は…どうして空が勇の家に行くんだ?そしてなんだ空の反応は…

家に行くことは問題ない、でもこんな人目に付く場所でする話ではないだろうというような言い方だ。

なんだこれ…浮気?いや、空が浮気なんてするわけないし、そもそも相手が勇だ。そんなことは絶対ありえない。

そう思っているのに手足は震え、冷や汗が止まらない。

トイレの裏の方から声がするので恐る恐る確認をしてみた。


「んむ…もうバカ…こんなところ誰かに見られたらどうするの?休日とはいえ部活に来てる人も多いのに…」


そこには僕の彼女である空と、さっきまで球を受けてくれていた親友の勇の唇を合わせている姿があった。


「ははっわりぃわりぃ、今日の試合で苛ついてて我慢できなくてよ!でもお前だって興奮してるんだろ?目が蕩けてるぞ!」

「違うから…急だったからびっくりしただけだから…」

「嘘つけよ!どうせ彼氏に隠れて浮気してることに背徳感とかで興奮してんだろ!」

「だから違うってば…ていうか浮気じゃないから…あんたのことなんて全然好きでもなんでもないから!」

「わかってるって俺たちは体だけの関係、ついでに持ちつ持たれつって関係だもんな。」

「そうよそれだけ…そろそろちぃも帰りの準備できる頃だと思うからそろそろ戻るよ。」

「わかってるって。で、帰ったらちゃんと俺の家に来いよ!夜まで可愛がってやるからよ!」

「はぁ…わかったってば…本当に頭の中性欲しかないんだから…」



なんだこれ…現実なのか…

どうして彼女と親友が同時に裏切っているのだろう。

頭がガンガンして心臓がギューッと締め付けられる感覚に陥る。

夢だとしたらたちの悪い夢だ。

ただこれはどうみても現実、僕の彼女が親友と浮気をしているという現実。


汗が吹き出て目も涙で滲んできていた。

でもなぜか僕はその現場を、震える手でスマホを持ち撮影していた。

非現実的すぎて自分でもなんでこんなところを撮影していたのかは覚えていない。

ただただ無意識のうちに動画を撮っていた。


そうして動画を撮っていたが二人の会話が終わり、移動しそうな雰囲気になった。

僕は慌てて撮影を止め、二人に気づかれないようにこの場を去った。

トイレに来たはずなのにそんなことも忘れ無我夢中で走り、荷物を置いていた場所に戻ってそれを掴んでそのまま走り続けた。




気が付いたら自分の部屋にいた。



あれは本当に現実だったのだろうか。

試合に負け、いじけて家に帰ってきてふて寝して見た悪夢だったのだろうか。

そう思い携帯を確認すると空からチャットが飛んできていた。


『ごめんね気づくのが遅れちゃった!トイレってどこのトイレ?学校の中のだよね?』

『既読付かないけどどうしたの?どこにいるの?気付いたら連絡ください』

『どこにも見当たらないから家に帰ったんだけどちぃも家にいるんだよね?ちぃママに聞いたよ』

『今日は気づけなくて一緒に帰れなくてごめんね!明日は一緒に登校しようね!』


そんな言葉が並んでいた。あぁ…やっぱりさっきのが現実だったんだ…

そう思い動画を確認するとやはり現実だった。空と勇がキスしているところ、そして二人の会話がしっかり撮れていた。


その動画を確認しているとまた頭が痛くなってきた。

どうしてこんなことになったのだろう…いつから二人は浮気していたのだろう…

頭がズキズキと痛み、色々なことを考えているところにまたチャットがきた。


『既読付いてるってことはちぃ気付いたんだよね!どうして一人で先に帰っちゃったの?私待ってたのに!』


どうしてってそりゃあんなん見させられたら帰るだろ!!!!


そんな思いが頭に浮かぶが一旦冷静になる。

とりあえずこれから自分はどうしたいのか、それを考える。

うーん…流石に大好きな幼馴染ではあったけど浮気は無理だなぁ…

空の両親とも仲が良いから別れたくはない気持ちもあるけど浮気はやだなぁ…

ていうか彼氏の親友と浮気とか終わってるなぁ…


なんだかだんだん思考が雑になってきて、頭は痛いし思考もグルグルだしもうどうでもよくなってきた。




だから僕は勢いそのままに動画の最初のキスシーンをスクショにとり、それをチャットアプリに貼り付けた。


『こんなの見せられたらそりゃ帰るでしょ。浮気は流石に無理なのでもう別れましょう』


そして1分も立たないうちに既読がついた。

しかし返信はいつまでたっても返ってはこなかった。


この返信の返ってこない時間で更に冷静になれた。

今言い訳でも考えているんだけどこんな写真撮られているならどんな言い訳をしても無駄だろうってなっているのか。とか

誰か近くにいて相談でもしているのだろうか、あ、というかこの後勇のところに行くって約束してたから今二人でこのチャットでも見てるのかもな。とか


10分程待ってみたが返信はないようなので簡潔に追撃をしておく。


『特に返信もないようだから無言の肯定として受け取っておくね、お互いの両親のことを考えたら絶縁とかは無理そうだから同じ学校にいる間はただの知り合いくらいでやっていこう。高校を卒業したらもう会うこともないと思うし。あ、あと浮気とかする前にちゃんと別れたりしたほうがいいと思うよ。勇と付き合うのかは知らないけどこれからは気をつけてね。』


ちょい早口で言いそうなくらいの長文になっちゃったけど自分の思いは伝えられたかな。

こんな嫌味まで言えるなんていつもの自分なら考えられないがそれだけショックだったということだろう。


さっきまでの頭痛も収まってきてなんだか考え方も明るくなってきた。

彼女を寝取られるなんて辛い出来事のはずなのになんでそんなに落ち込んでいないのだろう。

よくはわからないけれどひとまず。


部活から帰ってきてからご飯食べてないからお腹減ったな。

ご飯食べてからまた考えよ!

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