第07話 ありがとう

—— 玄関の扉を閉めた時、涙が頬を伝っていた。


 何か大切なものを思い出したような。

 何か大切なものを無くしたような。


「あれ、なんで...」


 何故かは分からない。

 ただただ、涙が流れていた。


「お、やっと出てきた。待ちくたびれたよー…って、なんで泣いてんの!?大丈夫!!?」

「いや、なんでも…くそ、止まんねぇ、なんだよこれ...」

「あぁ、もうほらっ!落ち着いて!」


 そう言いながら慰めてくる幼馴染に、抵抗する事も出来ず身を任せる。


 いつまでも泣き止まない俺の頭を撫でながら、困ったように。

 それでいて、何処か嬉しそうに。


「もう、相変わらず泣き虫なんだから…やっぱり、ゆう君には私が付いてなきゃダメね」


 その言葉を聞いて、涙があふれた。

 その言葉が、どうしようもなく嬉しかった。

 報われたような、救われたような、そんな気がして ——


「ありがとう...」


—— どこかの誰かに向けて、そう呟いた。

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