【短編】エンドロール、その後に ~転生勇者の里帰り~

Qたろう

— プロローグ ―

 国が ―― いや、世界中が歓喜で溢れていた。


 人々が、国中が、世界中が笑顔に包まれる。大道芸人があちこちで芸を披露し、そこかしこで豪華な食事と酒が振る舞われ、普段は邪険にされるスラムの孤児や野良犬までもが御馳走に頬を膨らませる…国王の生誕祭ですら霞むような、そんなお祭り騒ぎの様相を呈していた。


 それも当然のことだろう。

 人類をおびやかす魔王が討ち滅ぼされたのだから。


―― この世界は危ういバランスの上に成り立っていた。

—— 五十年に一度、魔王と呼ばれる存在が生まれ世界を蹂躙せんと暴虐の限りを尽くす。

—— それに対し人類の希望は、勇者と呼ばれる存在だけである。

—— 魔王が誕生すると、呼応するように勇者も誕生する ―― 正確には、勇者の力が発現する。


 そうして誕生した勇者が、三年に渡る旅の末に魔王に勝利したのだ。世界を挙げてのお祭り騒ぎになるのも致し方ないことだ。


  これがゲームなら、世界を救った勇者は褒美として姫を娶り、幸せに暮らしたのかもしれない。しかし、そうはならなかった。


 その世界の何処にも、勇者の姿は無かった。


 "勇者は魔王を討ち取った際に呪いを受け、息を引き取った"

 "その仲間達も、魔王との戦いで負った傷が元で亡くなった"


 国王の告示に、人々は勇者への感謝と哀悼の意を示し、ひたすらに騒ぎ続けていた。

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