移し神
モリアミ
移し神
その神は昔、今はもう無くなってしまった小さな集落で祀られていたという。その集落で祀られた神が何だったかはおろか、その集落のあった場所すら今はもう知るすべは無くなってしまった。争乱か飢饉かあるいは別の理由だったのか、その集落の無くなった理由も定かでは無い。ただ一つ、その神だけは今もどこかを彷徨っているという。
その集落の人々はある時自分たちの集落の行く末を知り、御神体から一人の村人に神を移したという。それが誰かはもうどうでも良く、それをどうやったかはもう定かでは無い。その神は今、移し神となり何処かに、誰かの中に宿っている。
ある者は、移し神には呪いが込められらており、あるいは明確にそういう目的の為に発生した信仰だという。他方である者は、移し神は多幸と繁栄を祈る為で、あくまで人を害する為の祈りではないという。ただどちらも、移し神という存在について好意的なことは共通している。
移し神は人から人へと移るといわれるが、これは移るというのでは無く移すというのが正しい。二人の人が静に目を覗き合い、一刻ほどすると他方へと移るという。そして一度でも、移し神の宿った者へ移ることは無いという。
移し神には一つ不思議な、そして確かな神通力があるという。それは宿った者は、自らの死期を悟るというものだといわれる。それをして、呪いが死期早めたという者が居り、死期を知らせる祈りだという者が居る。ただ一つ、死期を悟った者は程無くして移し神を人に移すという。
移し神 モリアミ @moriami
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