38.『選択的夫婦別名字』傷害事件

 ======= この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。

 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 泊(根津)あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。

 中津(本庄)尚子・・・弁護士。中津警部の妻になった。


 出口欣之助・・・裁判の被告。移民党議員。

 戸塚睦夫・・・無職。住所不定。

 井出亨・・・検察官。

 新町あかり・・・EITO隊員。

 早乙女愛・・・EITO準隊員。元白バイ隊隊長。現在は、政府要人のSP担当。

 工藤由香・・・EITO隊員。元白バイ隊隊長。現在は、政府要人のSP担当。


 ================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前10時。地方裁判所のある法廷。

 この裁判は、国会議員の『正当防衛』を争う裁判である。

 中津興信所の面々は、傍聴席で見ていた。

 被告である出口欣之助と、原告である戸塚睦夫の裁判である。本来なら民事訴訟の筈が、戸塚が議員になる前にプロレスラーだったことから、刑事訴訟になった。

 本庄は、証拠物件である、通りがかった自動車のドライブレコーダーの画像を提出、映像は、裁判官席脇のモニターテレビに映し出された。自動車のオーナーは、以前煽り運転に遭ったことがあり、360度型カメラを搭載していた。

 戸塚は、自動車が後ろ向きだから、安心したのか、ひたすら出口に暴言を吐いていた。

 その内、同伴していた出口の妻に殴りかかろうとして、つい出口は払いのけていた。

「今、反撃で殴ったぞ。元プロレスラーが暴力をふるっ・・・。」

 傍聴席から、『口で乱入』した、餅屋伊都子は、どこからか跳んできたボールを口で受け止めた。というか、口に投げ入れられたのだ。

 餅屋に廷吏に化けた早乙女と工藤が走って行った。

「どうしました?」という早乙女の声に「ふがふが。」と餅屋は応えた。

「え?何?これ?あ、ナイフだわ。ご同行頂きます。」と、早乙女が言い、工藤が手錠をかけた。餅屋は、ヤジと一緒にナイフを飛ばそうとしていたのだ。

 3人が出て行くと、本庄は、「あ。あそこを見て下さい。原告を見ている餅屋がいます。」と、モニターを指して叫んだ。

 1時間後。休廷による休憩が終る頃、廊下に本庄が来て言った。

「起訴は取り下げられたわ。どんな展開になるのか、楽しみね。餅屋が持っていたナイフはナイフガンのナイフよ。イミテーションのナイフガンは持ってたみたいだけど、跳ぶ訳がないわ。夏目リサーチが割り出した、ホテルに出入りしていた男、茅野勇作の友人が、今回の原告である戸塚睦夫だった。裁判を逆に利用したの。戸塚は、餅屋と組んでいた。週刊誌ネタとして、大きく扱う為にね。『選択的夫婦別名字反対派』の出口議員を嵌める為にね。総理は、出口議員に相談を受け、EITOに助けを求めた。いつも要人警護をしている、早乙女さんと工藤さんだけでなく、新町あかりさんも助っ人に入って貰ったの。『口封じ』の為に。魔球だったでしょ?」

「あのボールは、公判妨害を見込んで、のことですかぁ。あ、それで、新町さんは?」と高崎が尋ねた。

「すぐに帰ったわ、今日は違う場所で、ダーティー・ブランチと一戦を交えることになっているの。」本庄はサラリと答えた。

「正に、ワンポイントリリーフじゃないですか!」と、泊が感心した。

「そいうこと。餅屋も落ちぶれたものね。捕まるのを覚悟で派遣された、捨て駒よ。」

「え?」と、公子と根津は顔を見合わせた。

「どこかで見ていた筈よ。茅野か、あるいはダーティー・ブランチが。」

「冷やし中華でも、食いに行きますか。」と健二が言うと、皆が賛成し、「俺も行くぞー。」と、本庄のスマホから声がした。中津敬一警部だった。

 廊下を歩きながら、公子が言った。「同棲、詰まり、事実婚も通称も認められていて、総理も『各法律の修正を行えばいい話』って言っているのを知らないのね。『選択的夫婦別名字』を立法化したがる連中は。無理矢理隣国の『悲しい習慣』を真似させようとしているけど。」

「公金チューイングガムじゃないんですか?新しい法律作って支援団体作って、コーヒーで接待して、金額欄空欄の申請書にサインさせられた人が、名字を無くして行く。で、何百万かをインスタントコーヒー代を精算。詐欺そのもの。」と、根津は憤慨した。

「我々は、あぶく銭とは無縁。縁の下の力持ちさ。」と、健二は笑った。

 ―完―



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