囮結婚式

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。

 本庄尚子・・・本庄病院院長の姪。弁護士。


 大蔵太蔵・・・EITOシステム部部長。

 大文字伝子・・・EITO東京本部隊長。

 一ノ瀬なぎさ・・・EITO東京本部副隊長。

 筒井隆昭警部・・・警視庁テロ対策室からのEITO出向隊員。

 新里あやめ警視・・・あつこの後輩。警視庁テロ対策室勤務。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田慶子・・・俊介の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。

 小田祐二・・・やすらぎほのかホテルチェーン社長。慶子の叔父。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷署生活安全課刑事。

 愛宕みちる警部補・・・愛宕の妻。EITO東京本部副隊長補佐。


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 午後1時。やすらぎほのかホテル東京。披露宴会場。

 中津敬一警部と本庄尚子弁護士、中津健二所長と西園寺公子、泊哲夫所員と根津あき所員、3組の結婚式が行われていた。

 MCは、いつもの通り、依田俊介・慶子だった。

 大蔵の乾杯の音頭が終わり、盛り上がる頃に、盛り下がることが起った。

 けたたましく非常ベルが鳴ったからだ。

「皆様。落ち着いて下さい。今、スタッフに確認に参りますので。」と依田がマイクを通して言うと、「確認しなくていいよ。俺が鳴らしてやっただけだから。」と、言いながら、ゴルフバッグから男は火炎放射器を持ち出した。

 依田は、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た通信機器で、EITOやDDメンバーは、簡易な通信に用いる。

 男が立っている場所に、ピンポイントでスプリンクラーが作動した。依田の持っているリモコンは、単なるテレビのリモコンでは無かったのだ。

 火炎放射器は、忽ち焔が消えた。水だけで簡単に消せるのか?と疑問に思うところだが、特殊な水である。男は、火炎放射器を持ったまま、立ち往生した。

 中津警部は、容赦無く手錠をかけ、本庄弁護士は『自殺予防』にハンカチを噛ませた。

 招待客に化けていた、警察官数人が男を連行していった。

 エマージェンシーガールズも、念の為、数人が出席していた。囮の結婚式ではあったが、中津興信所は身内みたいなもので、協力態勢にある事務所だからだ。

 依田のスマホが鳴動した。Linenのテレビ電話だ。依田は、控えていた伝子にスマホを持って行った。

「先輩。火炎放射器男が出現、ピンポイントスプリンクラーシステムのお陰で取り押えました。愛宕さんに代わります。」そう言って、スマホのLinenの画面は愛宕に代わった。

「先輩の読み、通りでした。みちるがせがむから、逮捕させました。すぐ連行します。」

 依田は、にっこり笑ってスマホをしまった。

 今度は、伝子のスマホが鳴動した。伝子は、スピーカーをオンにした。

「こちらは、中津邸の筒井と新里。拳銃を持った3人組を逮捕。中津さん、家と事務所の『空き巣』は確保したから、安心して泊まってきて。」と、筒井は言った。

 伝子はスマホをしまった。

「中津さん、今日は泊まるんですか?」と、伝子は中津健二に尋ねた。

「ちゃんと、部屋を取ってありますよ、先輩。」と、横から依田が言って去って行った。

 エマージェンシーガールズも警察官達も帰っていった。

「本人は、ホテルに『泊まって』、留守番は、中津邸に『泊まって』か。面白い。」

 伝子の言葉に、「おねえさま。私は、おねえさまの所に『泊まって』いい?」と、なぎさが言って、ウチのクソババアの隣で良ければな。」と伝子は返した。

 舌を出して、なぎさは帰って行った。

「大文字さん、ここは、安全になったかも知れないけど、システムが・・・。」と、中津が言いかけると、横から小田社長が、「いえいえ、警部。悪戯客対策に使えますよ、無駄にはなりません。ほら、キャンドルサービス邪魔する人がいるでしょ。ウチも月に何回かあります。どこの会場も、困っているんです。その撃退用。無駄にはしません。」と言い、笑った。

 午後3時。中津邸。寝室。

「いいの?勝手に使って。」「この部屋は予備の寝室。高遠達が住んでた頃、来た事があるんだ。ゲストルームだよ。」「贅沢ね。」

 午後3時。やすらぎほのかホテル東京。中津健二達が借りた部屋。

 スマホを開いて、2人は『自宅のゲストルーム』の様子を見ていた。

「他人のアレは興奮するって言うけど、思わぬ福音だったな、公子。」

「うん。朝まで、たっぷり時間はあるわ。」

 実は、盗難対策用のアプリと、EITOのシステムは連動しているのだった。

 ―完―

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