ナイフガン
======= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。
中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
本庄尚子・・・本庄病院院長の姪。弁護士。
大蔵太蔵・・・EITOシステム部部長。
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午後1時。中津興信所。所長室兼会議室。
「これが、実物だ。」と、中津警部は皆にナイフガンを見せた。
「あれ?これ?どうやって嵌めるの?」と、公子が実際に触って言った。
「出来ないんだよ、公ちゃん。」と中津警部が説明した。
「一度、射出すると、壊れるんだ。だから、工場で大量生産という事は出来ない。今回の闘いに10挺持って来たが、これが精一杯の生産量だったに違いない、って本郷君は言ってる。」
「じゃ、警部。一発勝負の為に、手作りした訳ですか。」と、高崎が呆れた。
「どれくらい跳ぶんですか?警部。」と泊が言い、「50メートルだ。」と警部は事もなげに言った。
「50メートル?恐いわ。」と、あきが言った。
「恐いのは、予測した大文字さんだよ、なあ、兄貴。」と健二は言った。
「その通り。最初に大阪で使われた時からたびたび登場してきたナイフガンだが、今度こそ戦闘に使用されるだろう、と、先日の『シリアルキラー』事件で判断したのは、凄い『カン』だよ。今、戦線復帰しているが、下條隊員も傷ついた。凄い武器だ。」
「シリアルキラー事件って?」と、あきは尋ねた。
「まだ、こっちに資料届いてないか?おかしいな。今朝送ったぞ。」「すみません、まだ目を通していませんでした。」と、あきは舌を出した。
「簡単に言うと。23年前の小学生致傷事件を利用した、シリアルキラーの事件だ。犯人は2人。唆した奴と、乗っかった奴。シリアルキラーとは、『殺すのが楽しい趣味の殺人者』だ。商売の殺し屋じゃない。だから、尻尾を出しにくい。乗っかった奴は、被害者達の同級生には違い無かったが、23年前の事件の時、学校を欠席していたことを南部興信所の花ヤンと横ヤンが突き止めた。で、同窓会を装って集められた被害者達には虐められたことが無いことも分かった。嵌められたんだ。23年前の犯人は、自分は死刑相当だと言ったらしいが、今度の犯人は『心神耗弱だから無罪でしょ』なんて言ってる。この事案も、なお・・・本庄弁護士は引き受けなかった。死刑は当然なのに自分は助かって当然と思っている『クズ』なんか弁護出来ない、って。」
中津警部は、笑った。「正義の味方だからな、未来の嫁さんは。」
「呼んだ?」と、ご本人が登場した。
「兄貴。いつ『台本』書いたんだ?」と、健二が呆れて言うと、「台本も打ち合わせもないよ。」と応えた。
「結婚式の打ち合わせなら出来てるわよ。来月、『梅雨明け』よ。ジューン・ブライドなんてアホなキャンペーンに乗っかるカップルが多くて、6月は梅雨にも拘わらず予約で一杯だそうよ。あ。泊くんたちも一緒にやる?複数の合同結婚式だと3分の2の費用よ。」
「了解しました。」と、あきが勝手に返事して、泊は呆れた。
「先に相談してよ。」と、泊が言った時、本庄弁護士のスマホが鳴動した。
暫く相手と電話をしていた本庄は言った。
「敬一。裏のオスプレイ、シェア出来ないかしら?」
すると、マルチディスプレイから大蔵が言った。
「断る。タクシーじゃないから。全く。呼び出しておいて、いつになったら気づくのかと思ってたよ。急ぎなら、芦屋さんに頼んだら?」
マルチディスプレイから、大蔵が消えた。
中津警部は、リモコンを放り出した。
―完―
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