便乗詐欺
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津警部の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
本庄弁護士・・・本庄病院院長の娘で、中津興信所や南部興信所に調査を依頼することが多い。
新里警視・・・あつこの後輩。警視庁テロ対策室勤務。
村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長。
渡辺副総監・・・警視総監が病気の為、全て代行している。EITO立ち上げメンバー。久保田(渡辺)あつこ警視の叔父。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
1月5日。午前10時。中津興信所。応接室。
中津健二と泊は、公子、高崎、根津に、昨日の話をしていた。
「じゃあ、越権行為ばかりじゃないですか。SATも国賓館のSPも白バイ隊も。」と、根津が言った。
「まあ、そうだな。俺達は越権行為じゃないけどな。兄貴経由でEITOから依頼を受けたからな。あ。久保田警視もだ。問題だな。」
「どうなるの?」と、公子が尋ねた。「どうにも。どうにでも、かな。大体県境越えたらイカンっていうのが古いよ。」
「その通りだ、健二。たまには、いいこと言うじゃないか。」「たまには?」
音声が切れたが、5分後に派繋がって、マルチディスプレイにネット検索した内容が表示された。
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グリコ・森永事件(グリコ・もりながじけん)とは、1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年)に日本の阪神間(大阪府・兵庫県)を舞台に食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件。警察庁広域重要指定114号事件。また、略して「グリ森事件」「グリ森」とも言われる。犯人が「かい人21面相」と名乗ったことから、かい人21面相事件などとも呼ばれる。
2000年(平成12年)2月13日に愛知青酸入り菓子ばら撒き事件の殺人未遂罪が時効を迎え、すべての事件の公訴時効が成立してこの事件は完全犯罪となり、警察庁広域重要指定事件では初の未解決事件となった。]
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グリコ・森永事件
正式名称 警察庁広域重要指定114号事件
場所 日本の旗 日本:兵庫県・大阪府
標的 江崎グリコ・丸大食品・森永製菓・ハウス食品・不二家・駿河屋
日付 1984年(昭和59年) - 1985年(昭和60年)
概要 企業への連続脅迫・拉致事件
攻撃手段 食品への毒物混入となり、警察庁広域重要指定事件では初の未解決事件となった。]
「広域捜査部署が必要って話は『グリコ・森永事件』以来言われてきたが、半世紀近く経っても実現出来ていない。政治家がぼんくらばかりだからな、いつまで経っても、いつまでも。」と、中津敬一警部は言った。「確かに。」と中津健二が相槌を打った。
「追跡逮捕寸前で、『県境』が捜査方針の邪魔をして逃がしてしまった。そして、迷宮入り。縄張り主義・セクト主義と揶揄されたが、警察の体質が変わらなかった。病気療養中の警視総監も、代行している副総監も胸を痛めてきたが、頑固な組織体質を改めることは出来なかった。副総監がEITOに期待しているのは、『脱旧体質』の代わりなのさ。」
中津警部から、説明を聞いた3人は、沈黙した。
「関西じゃ、兵庫県警と大阪府警が1番仲悪い。関東では、警視庁と神奈川県警が1番仲悪い。だから、SATは入れ無かった。千葉県とかなら、いいのかな?」
「良くはないが、副総監が何とかするだろう。ああ。連中は、元大使を『売る』積もりだったらしい。」「流石、人身売買やっているって国ですね。」「売ってどうするか。臓器を売って、物体になった『燃えるゴミ』を始末する予定だったらしい。日本の反社より鬼畜だな。」
「ひどーいい。」と公子と根津は声を揃えて言った。
「知っての通り、大使は那珂国に直接的な批判をしてきた。殺すだけでは飽き足らない、ってとこだろう。入院したが、事実を知ったから、退院は長引きそうだな。」
チャイムが鳴った。根津が出ると、本庄弁護士だった。
「あら、お揃いね。あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。」
所長も所員も、画面上の警部も挨拶を返した。
「募金詐欺の案件よ。」「募金って、先日のEITOの事件ですか?」「いえ、能登半島地震よ。」
「詰まり、便乗募金詐欺ですね?」と、椅子を進めながら、中津健二は言った。
「じゃな。」と言って、」中津警部は通信を切った。
「相談者の話では、町内会でね、支援物資送る代わりに義援金送ろうって集めたんですって。1軒5千円。」「まるで、祭りの寄付金みたいな集め方だな。募金なのに、統一ですか?」と高崎が眉をひそめた。
「問題はここから。他の町内会でも同じことをやっていた。で、町内会長達は、『幸せが欲しい会』の会員なの。」
「じゃ、募金と言うより、団体への寄付ですね。募金じゃなくて上納金じゃないですか。」
泊が憤慨すると、本庄は、「そ。で、納得が行かない人達が、会に確認に行ったの、能登半島に届くのかって。消えたわ。」と本庄は応えた。
「で、行方を追え、と。」と中津健二が言った。
「そういうこと。今回は急がないわ。報酬も貰わない積もり。興信所には払うけどね。」「義憤ですか?先生。」「そうよ、健二君。」
午後3時。
「結構、年配者が多くね、町内会長さん達。でも、元タクシードライバーの方がいてね。その人物の車のナンバーの下2桁が分かったから、今送るよ。それで、何で皆乗せられたかって言うと、元区会議員なんだよ。凄い美人秘書連れてるし。前の選挙で落ちた人だけど、区議会でどんなだったか、。皆知らないんだな。落ちなかったとしても大変だったらしい。今流行の『裏金』、『不正支出』だよ。議長と小学校の同級生で、明るみになる前に返済したらしい。急に返済したって事は・・・。」
「ヤミ金か、それとも闇バイトか。とにかく、車両を抑えよう。」
午後4時。
「Nシステムで判明した。一昨日、高速1号線を通過した。北陸には向かえないな。尤も、交通規制敷いているが。ろくな準備体勢が出来ていないから来ないでくれ、って石川県では言っているし。ヤマ張って、その地区でヤミ金と思しき半グレの会社で怪しいのがいるから、警邏で巡回徹底したら、その会社の敷地内に、その人物の車があった。今、2課がガサ入れに向かった。」中津警部は通信を終えた。
「で、どうなるの?」、と健二にお茶を入れた公子が尋ねた。
「お金が返ってくればいいけどね。詐欺って、お金返らないこと多いらしいよ。」
高崎達が帰ってきた。「ご苦労様。」
中津健二は、経緯を説明した。「やっぱり男は『おんな』に弱いですね。連れの女秘書が能弁で、元区会議員をフォローしていたらしいです。」
午後7時。中津家エリア。
興信所事務所をクローズして、公子が夕飯の支度をしていると、ニュースを見ていた中津健二が「あっ!」と言った。
「どうしたの?」「利根川で女性の水死体。元区会議員秘書の名刺が見つかったらしい。消されたな。」「バックがいるってこと?」「そうなるな。」「私はバック好きよ。」
「ばあか。そういう話は・・・メシ食ってからな。カレーライスか。いつから正月にカレーライス食べるようになったんだろう?」「さあ?」
午後7時。警視庁。テロ対策室。
「ごめん。今、土左衛門が上がってね。例の元区会議員の秘書らしい。それで・・・。」
「後で報告しなさいよ、ベッドでいいから。」と電話の相手が言った。
「弁護士と付き合ってるの?中津君。」と、目の前の新里警視が言った。
「え。あの、腐れ縁でして・・・。」「弁護士は損するわよ。振られたら、引き受けてあげるわ。」
中津は、「行ってきます。」と慌てて出て行った。
「お前、冗談きついな。」と村越警視正が言うと、「渡辺さんの後輩ですから。」と、メガネをクイッと上げて、新里は出て行った。
「説得力のある言葉だな。そういう訓練受けてるのかな?」「かも知れんな。」と副総監はケラケラ笑った。
―完―
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