第197話 これからの事を考えて


 「あ、これも。間宮さーん。これもお願いしまーす」


 「はいはーい」


 謝罪会見風配信が終わった後、俺達はネットの大海原をサーフィンしている。順春と戦うのは確定だけど、ついでだからそれ以外に俺達の事を誹謗中傷してる奴らもいっちゃおうと思って。


 俺達の配信をいつも見てくれてる人達なら、あの馬鹿みたいな記事がやべぇってのは分かるんだけど、俺達の事をあんまり知らない人達は、あの浮気写真を信じてる人達もいるんだ。


 俺達の事を大して知りもせず、ただ人気者だから叩きたい。こいつは浮気してるんだから、叩いても許される。俺達は正義だ。


 まあ、どこにでもいるネットヤンキー達だ。


 大して調べもせず、上っ面だけみて批判する。こういうのもね、将来的に配信業界では害になるんだよ。大好きだった配信者やVtuberが意味の分からん批判で何人引退に追い込まれたか。


 まあ、自分達から炎上するような事をしておいて、いざ燃えると被害者ヅラする面の厚い配信者もいっぱいいるから一概には言えないけど。


 純粋に真剣に配信を楽しんでやってる人達が、馬鹿みたいなファンやアンチに潰されるって事がないように、有名な配信者になってる俺達が積極的に行動していく事が大事だと思う。


 これで後から同じような事が別の配信者で起こっても、色々法的措置やらがやりやすくなるんじゃないかなと。


 どこまで効果があるか分からないし、法的措置すら悪用される可能性もあるけどね。


 一時は同意してヤる事ヤって、お金ももらって、その後に週刊誌に告発するとか言う二毛作って言われるのが流行ったし。


 もうこの辺は人間が人間である以上どうしようもない事だ。


 「いやぁ。多いねぇ。滅茶苦茶お金掛かりそうだよ」


 「気にしないで下さい。お金目的でやってる訳じゃないですし、これに関しては赤字なんて気にしてないので」


 俺達と契約してる弁護士さんが苦笑いしながら言う。ネットを漁れば漁るほど誹謗中傷は出てくる。流石に全部とまではいかないけど、酷いのは適時開示請求して、訴えていくつもりだ。


 「でもこれ、ずっとやってるとキリがないよね?」


 「ええ。いつかはこれ専門の部署でも作ろうかと思ってます。やってもらう人は誹謗中傷をひたすら見続ける事になるんで、中々メンタル的にキツいかもしれませんが」


 「そうかな? 人の悪口を見るのが好きって人も結構いるよ? 他人事だから楽しいんだろうけどね」


 そうなのかね? まあ、ゴシップ記事なんかも言ったら、人の粗を見つけて悪口を書いてるようなもんだしなぁ。実際そういう事をしてる人が悪いし、そういうのが盛り上がるのは事実だけど。


 ずっと見続けたいとは思わないや。


 「それより間宮さんの方は大丈夫です? 結構案件回しちゃってますけど」


 「何人か事務の人や、弁護士を新しくうちの事務所で採用したよ。正直これを見てると、君達と関わってれば一生食いっぱぐれる事もなさそうだし、人手を増やしても問題ないかなって」


 「そうですか? それなら良いんですけど」


 間宮さんは東大にいる時にお世話になった教授のツテで知り合ったんだけど、まあ優秀で。若くして独立したけど、そこまで大きい事務所って訳じゃなかった。


 それが今じゃそこそこの人数を抱える事務所になってる。このまま俺達の会社全般の顧問弁護士になって欲しいと思ってるくらいだ。


 いつか最強の法務部と言われたあの会社に匹敵するぐらいになってくれないかな。

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