第129話 夏の終わり


 「夏休みももうすぐ終わりだなー」


 「もう少し遊びに行くべきだったかしら? 加減が分からないわね」


 梓と歌の収録を終わらせて一息つく。

 いつの間にか九月になっていて、まだ暑いけど夏は終わりって感じ。


 サークルの合宿と与論島への旅行。

 それ以外にも結構遊んだと思う。


 宇良さんや曽川君と買い物に行ったり、徹夜でゲームしたり。


 「お出かけとかもっとしようと思ったけど、暑い、人が多いで中々なぁ」


 「どちらかと言うと私達はインドアだしね」


 それな。家でわちゃわちゃしてる方が楽しい。誰にも気を使う事なく好き放題出来るし。それが大学生らしいかって言われれば首を傾げるしかないけども。


 まあ、俺達なりに楽しんでるから良いよね。楽しみ方は人それぞれって事ですよ。



 「サイモンベイカ◯って良い男よね」


 「分かる。このドラマの役にもピッタリって感じがするしね」


 リビングで晩飯を食べ終わった後、みんなでテレビを見てる。まあ、海外ドラマなんだけど。


 「このドラマ面白いんだけど、殺人の理由の大半が不倫よね」


 「確かにな」


 俺が海外ドラマで一番好きなのがメンタリス◯なんだけど、梓に言われるまで気付かなかったな。確かに、不倫ばっかりだ。


 「なんで不倫するんだろうな。俺にはその思考回路が理解出来ない。その人と付き合いたいなら、離婚して堂々と付き合えば良いと思うんだけど」


 「さあ? 私も理解は出来ないけど、理由はあるでしょ。離婚した時に財産を分けるのが嫌だとか、相手が経済的に裕福だから手放したくない、だけど他の人と付き合いたい。人間だもの。人の数だけ無数に理由は存在するわ」


 そう言われれば理由は分かるけど、理解したくない話だな。


 まあ、俺はパートナーに恵まれてるからそういう事を言えるんだろうけど。相手に不満が溜まって爆発して、そういうことをしちゃうって事ですかね。


 「ちょっと。離婚した私の前でそういう話はしないでくれる?」


 「母さんはもう男を見る目がなかったとしか言えないよね」


 母さんがぷりぷりと怒りながら言ってくるけどね。父親エピソードを聞く限り、顔で選んで失敗したとしか思えない。


 若気の至りと言えばそれまでだけど。


 「その種であんたは産まれてるのよ?」


 「チャラ男に育たなくて良かったね」


 「私の育て方が良かったんだわ。流石私ね」


 ああ言えばこう言う。

 やれやれだぜ。


 まあ、育て方が良かったかどうかはともかく、比較的まともに成長はしたんじゃないですかね。


 今世は40まで生きた記憶があるけど、回帰前でも人様に迷惑かけずに生きてきたと思う。ちょびっとばかしギャンブルに夢中になる事はあったが、借金をしたりした訳じゃないしね。ちゃんと自分で責任を取れる範囲でやってました。


 そう考えると母さんの育て方が良かったのではと思ってしまうな。

 調子に乗りそうだから絶対に言わないけど。


 梓ママは苦笑いだ。

 事情が事情だしなぁ。


 「再婚するなら言ってね」


 「もう男にはこりごりだわ。良い男は遠くから眺めておくのが丁度良いのよ。やっと分かったわ」


 さいですか。

 もし再婚するって言ったらしっかり調べるところでしたよ。母さんの男を見る目はマジで信頼してませんからね。


 

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