第45話 アプリ製作


 「うーん。なんかもう少し捻りが欲しいかも?」


 「だよなぁ。ありきたりすぎんだよ」


 今日は普通の平日。

 俺は千葉のとある喫茶店で放課後におっちゃんと会っていた。

 因みに俺は制服である。ってか、投資をする時に普通に年齢は告白した。

 俺が中学の頃から競馬場に居たのは驚いていたが、『最近の子はませてるんだな』の一言で終わりだった。

 まぁ、これもスキルでおっちゃんに悪感情がないって分かったから出来た事なんだけど。


 おっちゃんの会社には6人ぐらいの人材が居るが、俺の事を知ってるのはおっちゃんだけだ。

 あんまり広めすぎるのは良くないし。


 で、今やってるのはアプリの製作。

 ダメだしをしたが、素直に驚いている。

 だって俺が軽くアイデアを出したのは一週間前の事なんだ。それをすぐに形にして持ってくるとは。

 おっちゃんが優秀なのか、それとも雇ってる人が優秀なのか。


 「うーん? 棒人間だから面白味が足りてないだけかも? これを絵にしてみるか」


 「そこは外注するしかないなぁ。俺らの中に絵心がある奴が居ないんだよ」


 俺が提案したのはストラテジーゲーム。

 みんなも名前ぐらいは聞いた事あるんじゃなかろうか。クラッシュオブクラ○である。

 回帰前滅茶苦茶ハマったんだよね。

 サービス開始から5年ぐらいは続けてたと思う。


 辞めたのは別のアプリにハマったからである。

 これが大層金食い虫でして…。当時はいくつものゲームに課金する余裕が無かったので、仕方なく諦めたのである。それでもちょこちょこログインはしていたが。


 流石に丸パクリはしてないが、ゲーム制や課金システムはほぼ一緒。やっぱり丸パクリかも。

 いやぁ。申し訳ない。パッと浮かんだのはこれだったんだ。パズド○とかモンス○とかもあったんだけどね。


 「うーん。例えば戦士はこんな感じかな」


 俺はカバンからお絵描き帳を出してサラサラっと描いていく。

 このお絵描き帳は主にPVで思い付いたネタを描き殴る為のもので、授業中の暇つぶしである。


 「おぉ…。そういえば坊主は絵が上手かったんだったな」


 そういえば、おっちゃんの有料サイトの背景とかは俺が担当したんだった。

 ってか、こういうのは俺に仕事を発注してくれたらいいよね。お金になるし。

 こんな絵を描くぐらいならすぐだしさ。


 「弓士はこんなんで…巨人はこんなの。盗人はもうちょっと下卑た顔の方がいいか」


 「待て待て! 上手すぎるだろ!」


 そりゃスキルでチートしてますからね。

 上手いに決まってるよ。


 「坊主に依頼するからよ。この絵の戦ってる所とかパターンで描いてくれないか?」


 「お任せあれ」


 もう少し日本受けする絵にしようかな。

 本家の絵も好きなんだけどさ。やっぱりちょっと海外っぽさが…。

 海外の会社なんだから当たり前なんだけど。


 「動きは少しコミカルにした方がいいかな。ガチ過ぎるのじゃない方が受けるかも」


 「なるほどな。参考にしよう」


 「後、キャラいきなり全部出す必要はないよね。人気が出てきたら新ユニット登場なんかでアップデートを入れたりしてさ」


 「待て。メモするからよ」


 おっちゃんはカバンからノートパソコンを出してペコペコとタイピングしている。

 出来る大人って感じで腹が立つな。追加でサンドイッチも注文してやろう。奢りだし。


 「この際防衛設備とかギルド本体の絵も描いちゃうか。レベルアップで豪華になっていく感じにして…」


 「課金制度はやっぱり時間短縮か?」


 「だね。後はお金と魔力もゲーム内のダイヤモンドで買えるようにしたり」


 「ふむ。ならレベルが上がる毎にとんでもない時間がかかるようにしといた方がいいな」


 「後は大工さんを課金した人は増やせるとか。勿論上限はつけてね」


 やべぇ。喋り過ぎた。

 でも止まらないんだ。あの時のハマってた記憶がムクムクと蘇ってきて、ついつい。

 軽いアドバイスだけにしようと思ってたのに、どんどんクラッシュオブクランになっていく。


 「ふむ。坊主が考えてるギルド同士の戦いの事とかも考えると絶対にサーバーか足りないな」


 「個人で相手の拠点を攻めてお金や魔力を強奪するだけでも面白いと思うけどね。絶対対人戦は入れるべきだよ。こういうのは共有したり、自分の拠点の防衛配置とかを自慢したりするのが面白いんだから」


 「なるほどなるほど。俺も次から次へとアイデアが湧いてきたぞ。会社の奴らとも相談したい。坊主には絵の依頼をしていいか? 俺は帰ってみんなの意見を聞きつつ、形に仕上げてみる。それからサーバーの事やらも考えていこう」


 「あいあい。じゃあ今日はご馳走様」


 「俺の方こそ貴重な意見さんきゅーよ」


 これで今日の所は解散。

 梓も今日は友達と遊びに行ってるみたいだし、素直に家に帰ろうか。


 「ん?」


 喫茶店を出て歩いて駅に向かっていると、前から曽川君が女の子と一緒に歩いてるのを見かけた。


 「ほう? ほうほう? ほうほうほう?」


 これはあれですかな?

 アオハルってやつですかな?


 「女の子は知らない人だな」


 別の学校の子かね? 曽川君からそんな浮ついた話なんて聞かなかったんだけど。

 お友達の俺に相談してくれても良いじゃんね。


 「ってあれ?」


 なんだか雲行きが怪しいような?

 不良みたいな見た目の奴が女と合流してるぞ?


 「あーあー。どういう流れでそうなったんだか」


 女は不良に抱き付いて曽川君を指差し、何かを喚いている。これはひどい。

 美人局みたいなもんじゃん。


 仕方あるまい。介入しますか。

 一応動画機能をオンにしてと。

 後は胸ポケットに入れておけば、大体の映像は撮れるでしょ。警察沙汰になった時用の証拠が必要になるしね。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る