第44話 体育祭
「模試って受けるべきなのかなぁ」
「高三になってからで良いと思うわよ」
体育祭を明日に控えて、学校中がそれなりに盛り上がってる中。
俺と梓は食堂でご飯を食べながら大学受験について話していた。
うちは普通に偏差値が高い進学校なので、大体の人が大学進学希望だ。
既に受験に向けて動き出してる人は大勢いるし、俺達も東大受験の為に準備した方がいいのではと思ってたけど、梓は割と楽観していた。
「三年になってからの方が気合いが入るでしょ。私達が今から対策しても途中でダレるわよ?」
「そういうもんか?」
模試なんて学力チートしてる俺達からすると練習ぐらいにしか思わんしなぁ。
あんまり考え過ぎも良くないか。
翌日。
千葉高校体育祭が始まった。
去年は入学してすぐだった事もあり、探り探りな感じだったけど、今年は違う。
それなりに活躍してチヤホヤしてもらうぜ!
「どうよ! 割と似合ってると思うんだが!」
「お揃いにして良かったわね」
美容院に行って、梓とお揃いの髪型にしてもらった。わざわざこの日の為に髪の毛を伸ばしておいたんだぜ。一度やってみたかったんだ、コーンロウ。
「でもこの引っ張られてる感が慣れないわね」
「それな。将来ハゲたらどうしよう。スキルの力で解決出来るかな」
「無理だったら潔くスキンヘッドにしなさいね。見苦しくチョロっと髪の毛を残してる方が恥ずかしいわ」
だな。少しでも兆候が見えたら機先を制して全て剃ってやる。大丈夫。ハゲてもイケメンな筈だから。
「えーっと、俺達が出るのは…」
「男女混合リレー、綱引き、玉入れね」
iPhon○でパシャパシャとお互いの写真を撮りあったり、ツーショットを撮ったり。
カップルらしい事をしながら学校に向かう。
「あ、この応援合戦を見ないと。チャラ男が出てるんだよ」
大会プログラムを流し読みする。
俺達がチヤホヤされるのは男女混合リレーかなぁ。美味しい場面で回ってきて欲しいもんだ。
「あ、谷君! 中村さん!」
まもなく学校って所で曽川君とバッタリ。
やっぱりどこをどう見ても男の娘だ。
「うわぁ! 髪の毛気合い入ってるね!」
「去年は出来なかったからな! 今年は三年生を差し置いて一番目立ってやるぜ!」
「そんな事しなくても谷君達は充分注目の的だけどね」
そうだな。何せ大金を投資した容姿力ですから。
それにカリスマやらも相まって、俺達は学校でそれなりに人気者なのである。
流石に他校からわざわざ俺達を見にくるとかいう都市伝説にはまだなってないが。
知名度が足りないのかな。まぁ、そこまで目立つと日常生活に支障をきたしそうだから、程々で良いんだけどと強がっておく。
「梓ちゃんカッコいいー! 写真撮ろー!!」
「勿論良いわよ」
学校に入ると沢山の女子に梓が囲まれた。
くっ…。人気度は梓の方が上…。
いや、そりゃ男がうほーとか言いながら言い寄ってきても気持ち悪いだけなんだけどさ。
なんか負けた気はするんだよね。
「曽川君、写真撮ろっか」
まぁ、それはそれ。これはこれ。
しっかりと写真で思い出を残させてもらいましょう。
「加速装置!!」
バトンを受け取って某アニメキャラのセリフを受け取って走り出す。
先頭まで約30m。全然射程圏内である。
運動能力は60しかないけど充分。
これでも体育の成績はずっと10なのだ。
「おっさきー!」
あっという間に追い付き追い抜き、アンカーの梓にバトンを渡す。
ここまで来たらもう勝ち確である。
梓が二位との差のぐいぐい広げていってゴール。
「はぁ。圭太のせいで目立てなかったわ」
「一人ウイニングランが出来たじゃん」
わはははは!
これで千葉高校内に俺のファンが更に10人は増えたに違いない。
この後にチヤホヤされるのが楽しみだ。
「解せぬ」
目の前の梓に集まる人だかりを見てポツリと呟く。いや、俺にもいっぱい称賛の声はかけてもらったんだ。でも、気付けば梓の方が人が集まっている。
「ふっ。これが人望の差ってやつか」
梓はサバサバしてるように見えて、かなり面倒見が良い。誰がが困ってたらさり気なく助けたりしてるし、何より回帰前から馬鹿な俺の面倒を見てくれてるのだ。
そりゃママ味スキルが上がるってもんよ。そしてそれが現在の人付き合いに活かされている。
俺もスキルありきでなんとか交流しているが、この辺はスキルじゃなく人の本質とやらではなかろうか。
「楽しそうにしてるからいっか」
あれで迷惑そうにしてるなら助けに入ろうかなと思うけど。なんだかんだ楽しそうにしてるし、俺ちゃんは大人しく退散させてもらいますよ。
「谷ー! こっちで写真撮ろうぜー」
「喜んでー!」
クラスの男子に誘われました。
嬉しい。
その後綱引き、玉入れも無難にこなし、チャラ男が出ていた応援合戦を見て体育祭が終わった。
残念ながら優勝は他のクラスに掻っ攫われたが、みんなでワイワイと楽しめたし、たくさんチヤホヤされたし俺は大満足です。
「青春してるって感じだなぁ」
「ほんとねぇ」
回帰前もこんなに楽しかったっけ?
今の方が面白い様な気がするな。
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