こんな失恋してみたい

こんな失恋してみたい

          森川 めだか


 今朝、寒くなった。

ブレザーに袖を通して、ツヨシは「行ってきます」も言わないでドアを閉めた。


下駄箱で上履きからスニーカーに履き替えていると、「須田すだくん?」と声をかけられた。

初めて見る女の人だ。

ま、この学校の教師の顔なんてほとんど覚えてないから大差ない。

「何すか」もう帰りたそうにして言う。

「私、スクールカウンセラーの七篠ななしのです。よろしく。あなたの担任の先生から相談があってね。・・慢性疲労じゃないかって」

あの担任の言いそうなことだ。

「ハッタリ先生ですか」

「そんな名前だったっけ? 私、赴任して間もないから・・」

「僕が疲れてるのはこの学校ですよ」吐き捨てて、久しぶりに笑った。

私立T学園。頭の良い子が集まる学校だから私立文系コースの僕だけが外れて一人で帰るという寸法だ。

薄幸そうなひとだったな。

不幸面してれば誰かが助けてくれんのか。

ツヨシは自分の影を見ながら歩いていた。

白い校舎はもうとっくに見えなくなっていた。


「須田、帰り保健室寄れ」

滅多に言葉を交わさないハッタリが言った。

保健室ってどこだっけ。

このハゲ。

人は眠くなくても寝れるものだ。

三年間、机に突っ伏してやってこれた。

もう面倒事は御免だ。

素直に保健室に寄った。

「須田ですけど・・」

見たこともない保健室の先生。

黙って横を差す。

薄いパーテーションに仕切られて薄い影が浮かんでいた。

「須田ですけど・・」

あの人だった。

「七篠です」

七篠は向かいの席を差す。

座れということだろうか。

「何ですか」

ちょっと困ったように笑う七篠。

暖かそうなフリースを着ている。

ユニクロじゃないフリースだ。

「何ですか」席に座ってもう一回聞く。

窓から直射日光が当たってこの人も歓迎されてないのだと気付く。

隣では保健室の先生が聞き耳を立ててるし話す事も何も無い。

「早く帰りたいんですけど」

「帰って何するの?」

「特に何も」

七篠は困ったようにまた顔を伏せた。

「あなた必要ないんじゃないんですか? 問題児もいないし」

七篠はハッとして黙った。

「いじめもないし不良もいないしユートピアじゃないですか」

「みんなローファーなのに、君はスニーカーなの?」

「そういうの嫌いなんです」

「そんなに嫌ならなんで転校しないの?」

「勝手でしょ」

高校三年。今更、転校なんてできるか。

中高一貫。高校から入ったのが失敗の始まりだった。

内申書なしでテストだけで入れると浮かれて、入ってみたらクラスは19人だけ。

三年間同じクラス、同じ担任。A組。

「勉強の話しかしないのが正常なんですか」

「え?」

思ったことが言葉に出てしまった。

「ともかく、懲役三年。僕は毎日牢獄に通ってるんです」

「お友達はいるの?」

「ここは幼稚園ですか? 一日誰とも話さないなんてザラだよ」

親は大喜び。進学校だからね。

親の期待なんて消え失せた。

毎日寝に来るだけ。

海沿いの高校だから海が嫌いになった。

「もういいすか」

「もうちょっと・・」

「いいから」席を立った。

「週一でいいから来て」

週一という響きが気に入って、「ハ」と笑った。

「放課後ですか」

「放課後」

会釈もしないで出て行った。

保健室の先生は何も聞かなかったように脚を組んでいた。


翌日、いつもの様にチャイムが鳴るギリギリの時に登校した。

挨拶もしないで自分の席に着く。

誰もが黙って気まずそうにしている。

ハッタリが憮然と、「俺が来る前に来てないと遅刻にするぞ」と言った。

またいつものハッタリか。

構わず机に突っ伏した。

「誰のことか言わなくても分かるだろ?」

ハッタリが横を通る気配がした。

チャイムの前に来てるんだ。本当にそんな事したら殴り込みに行ってやる。

「俺の言ってること間違ってるか?」

皆はおとなしく聞いている。

この学校では見ざる聞かざる言わざるだ。

一挙手一投足も。

チャイムが鳴った。

他のクラスはもっと適当にやってますよ。

授業がやるクラスに移動する。

寝る場所が変わるだけだ。

今日一日もまるで記憶がないまま過ぎ去った。

七篠のことも忘れていた。

授業道具をロッカーに入れて帰る。

退屈は死に至る病だなあ。

禁固刑か。

色々あったような、なかったような三年間でした。

卒業アルバムには写真を入れないで欲しい。


金曜日、七篠の所へ寄った。

約束通り放課後だった。

「顧客は僕一人だけですか」

七篠は肯く代わりに笑った。

薄荷の香りがした。

この人、煙草吸ってるのか。

須田も隠れて吸う。

まだ年齢確認なしで煙草が買えた頃。

財布には広末涼子の写真が入っている。

「心を折ったんです」

「え?」七篠が顔を上げた。

「早いとこ話を進めましょうよ。入って三日で気付きました。誰とも合わないって。だから自分から心を折ったんです」

「だから寝てばかりいるの?」

「そうですね」

「つまらなくない?」

「もう慣れました。石の上にも三年。やっとおさらばできるんです。スクールカウンセラーなんて形だけでしょ?」

「大学には行くんでしょ?」

「行きますよ。頭の悪い大学。ここの誰とも会わないのが気が楽ですよ。一人暮らししてみたいな。どうせずっと一人なんだし」

「外に出ない?」

七篠さんと並んで歩いた。

窓に鉄格子が嵌まっている。

本当に刑務所だな。

住宅街を抜けて、近くの神社へ上る。

ここはよく知っていた。

一人になれる場所だ。

「君も吸うんでしょ?」

七篠さんは薄荷の煙草を見せた。

「吸いませんよ」

「匂いするよ」

寒色でまとめられた七篠さんの服装には薄荷がよく似合った。

スヌーピーにどっか似ている。

「そんなに肩肘張って疲れない?」

図星だった。

「中学までは普通だったんですけどね」

恐い顔になった。

目も恐くなった。

自分で自分が嫌いになりそうだった。

「どんな花もね、海水じゃ腐っちゃいますよ」

押し花みたいな人だ。

この人は。

花の名前も知らないけれど。

考えることもやめた。

何も感じなくなろうと決めた。

感情と思考は捨てた。

「私も男の人が怖いの」

「は?」鼻で笑った。

「男嫌いなのに男子校来たんですか?」

「克服するなんて無理だよね」

海は水びたしだ。

海岸は砂だらけだ。

「ぬるま湯みたいなこの学校は合ってると思いますよ」

「ナメられるもん」

「そりゃそうかも知れないけど」

「君は、須田くんだっけ? どうしてこの学校を受けたの?」

「テストだけで入れるからですよ」

「頭はいいんだ」

「塾行ってましたから。そのせいで勉強はできるんだけど、教師の話なんて全然聞いてなかったから、内申書は駄目でしてね。教師は教師としか見てませんでした」

「嫌われる典型だね」

「一つ傑作な話しますよ。ここの二年の時、よく覚えてないんだけど、どうしてだか、僕が数学の先生連れて来いって話になったんですよ。で、階段下りてる時に気付いたんですよ。僕、数学の先生知らないな、って。全部寝てましたから。でも、教室戻って聞くのもあれなんで、とりあえず職員室まで行って、A組で数学教えてる先生呼んで下さいって言ったんですよ。で、出て来たのが全然知らない人。見た事もない。その人も僕のこと見た事なかったと思いますよ。んで、A組で呼んでますって言って、・・その後、どうしたのかな? 逃げたのかな? 覚えてないな。そのまま、教室行ってまた寝たのかも知れませんね。そんな感じ」自分だけ笑った。

七篠さんは笑わなかった。

中学の時の僕だったら笑わせられたかな。

「間違い探ししましょうよ」

「間違い探し?」七篠さんがこっちを見た。

「僕がどうしてこの学校に入れたか。保健室にいたずらしておきます」

リュックを背負って一足早く階段を下りた。

もう帰りたかったからだ。

もう保健室の先生も帰った保健室に入ってボールペンで落書きをして帰った。


七篠は保健室を見渡してみた。

しばらくして、「うがい手洗い」の下に小さく「カンニング」と書いてあるのを発見した。


七篠さんとすれ違うことはあったが、何も交わさなかった。

「やりてー」通り過ぎた後に在校生が言った。

いい女ならいくらでもいるだろ。胸ぐらを掴んでぶん殴るところなんだろうけど、この学校じゃ見ざる聞かざる言わざるだ。

僕の力じゃね。

拳を握って息を吐いて手を温めた。

何の関心もない目が僕の目になった。


金曜日、また七篠さんの所に行くと、オセロが並べてあった。

「何してるんですか?」

「遊びながら話そうかなって」

「僕ゲーム嫌いなんですよ」

七篠さんが黒で、僕が白だった。

オセロは冷えていた。

「冷蔵庫に入れてたんですか?」

「外」

七篠さんが先攻で、僕が後攻だった。

「引っ込みが付かなくなったんだ」

「後にも先にも棒に振ったんです」

僕の負けだった。

勝つつもりもなかったし。

床にポーターのポーチが置いてあった。

「ポーター好きなんですか?」

「プレゼント」

「へー」

「服、好きなの?」

「ラルフローレンなら詳しいです」

「お金持ちなの?」

「中産階級ですよ。僕が詳しいのは古着だけ」

「けど、三年まで上がったのだから勉強はできなくもないんでしょう?」

「先生から教えてもらうんです。誰も自分のクラスから留年なんて出したくないんですもんね」

「テスト前に?」

「はい。応用はできませんけど」

「自分で勉強する気はないの?」

「起きてるのが辛いんです」

「目が辛そうだもんね」

「分かりますか?」

「いつも緊張してる目してる」

どうやらこっちも負けのようだ。

指の関節を鳴らした。

「そこまで分かりますか」

「頭が固い」

「たった一つの過ちで人生って転げるんですね」

七篠さんが窓を開けた。

「顔、洗わして下さい」と言ったきり、帰らなかった。


近くの神社で煙草を吸っていた。

「ここにいたんだ」

「探してくれたんですか」

「ううん」七篠さんも煙草を取り出した。

「煙草吸いに来ただけ」

「僕達、白クマとペンギンみたいですね。北極と南極にいて」

「極東にいるじゃない」

チャコールフィルター。

「どっちが白クマ?」

「さあ。適当に言っただけです」

「気の毒に思えてきた」

「それがカウンセラーの仕事でしょ?」

ため息を吐いた。

「ため息は嫌いなの」

「僕は好きです」

煙草を吸っているのを、七篠さんは黙認していた。

「勇気がなかったんだ」

「転校生は苛められ易いって聞きますもん。僕もそんなに強くありません」

「言い訳がましいな」

「それに、僕の成績で行けるのは頭の悪い高校ですよ。きっとヤンキーばっかですよ」

「須田くんはヤンキーじゃなかったの?」

「僕は普通組です。いつまで吸わないんですか? それ」

「え?」七篠さんは煙草を持ったままだった。

「案外、下手なんですね、嘘」ニヘラと笑った。

こんな笑い方する男じゃなかったんだけどな。

「村八分なの?」

「そうですね。仲良くない友達ならいますけど」

拝むような格好をしていた。

疲れ切って。

「七篠さんって呼んでいいですか?」

「力み過ぎじゃない?」

ライターにチルチルミチルと書いてあった。

「チルチルミチル仲間はずれはミ」

「夢は?」

「フィクションライター」

煙草を吸う前は煙草の80%はため息で出来ているんだと思ってた。

煙草はただ苦かった。


季節は早く過ぎ、ダッフルコートを着る季節になった。

「最近どう?」

「コンスタントに不幸です」

七篠さんはヘアバンドを着けていた。

ちぢれた髪を後ろに伸ばしていた。

表面張力のような日々。

「ため息ばっかり」

「そんな年違わないくせに」

冬でも、帰ると、汚い物を洗い落とすようにシャワーを浴びた。

「金魚は塩水に浸けたら生き返るんだよ」

「毎日、冷水浴びてますけど」

「ど、どうしてフィクションライターになりたいの?」

「有から無を作り出すからです」

「ご家族は? 親子の愛?」

「ウチは家庭崩壊してますから」

「家庭崩壊?」

「父はロリコンで借金魔だし、兄は過敏性大腸症候群。母は、・・何でしょうね」

「愛してくれた?」

「母は死にました」

「あら、そう。お気の毒に・・」

「僕の中でね」

ツヨシはグイと詰め寄った。

「僕の言う事信じてくれますか?」


七篠はツヨシのした話に少なからずショックを受けていた。

それは、どういうなりに、自分が心を折ったかの克明な詳述だった。

中学までは仲の良かった友達、綻びが見え始めた家族の絆、それは優れた感性のみが許される痛みと弱さであった。

「それは全部僕の逆恨みなんでしょうか」

自分を失った瞬間、闇の中へ消えたあの時。

ああ、誰も気付かないんだな。

本当は傷付きやすい心が心ない現実に引き裂かれる痛み。

本当は母を庇っているんだろう。

この学校に居続けるのもそのせいか。

この子ならライターになれるかも知れない。


「数学の先生がお前には教えたくないって言うんだよ」

ヨッ、反面教師の鑑。

体育祭の時、勝手に割り振られた風紀委員。

あの人のピンクのシャツを取り締まりたかった。

「足がなくなるよ」

母の気遣い。

犬の散歩以外では立たない。

センター試験の時、現代文だけよかった。

「これ100点満点じゃないの?」

200点満点だった。

円グラフ。

「鋭利だね」

高校に入ってから勉強なんかしたことなかった。

読書も勉強するみたいでいやだった。

つまらないTVドラマが唯一の趣味だった。

押し入れに煙草が入っている。

この家の唯一の和室が居室だ。

心穏やかに過ごそうと思った縁側はただの物置きになってしまった。

夢のマイホーム。

広末涼子はただの大根役者になってしまった。

アイドルのままでよかったのに。

人の世は移りにけりな白妙の。

人は、無口なキレ者より、バカで明るい方がいい。

ため息は聞こえない方がいい。

適当が丁度いい。

泣かない方がいいに決まってる。

行く春や鳥啼き魚の目は泪。

僕が見ているのは亀だけど。

首が伸びるからのび太。僕が付けた。

メスだけど。

勇気が足りない。


誰か目の敵がいた方が空気が成立する。

「ホットショット」という言葉を知ってはいた。

更年期障害の一つで、急に汗が出る。

登校中の電車の中で滝のように汗が出た。

「やだ、気持ち悪い」女子高生の声。

動悸が激しい。

汗が出ると恥ずかしい。恥ずかしいと汗が出る。

ハンカチを持つ習慣はなかった。

挙動不審で顔を紅潮させてただひたすらに耐えた。

駅に着くとダッフルコートも開けてワイシャツの下からティッシュで汗を拭いた。

なにかひどく自分が惨めだった。

その日は金曜日で、真っすぐ教室に行く気にはなれず、保健室に行った。

誰にも取り乱した姿は見せたくなかった。

「七篠さん」チャイムが鳴った。

まだタラタラと汗が流れていた。

「どうしたの?」

ダッフルコートを脱ぐとワイシャツが背中までびっしょり肌に貼り付いていた。

無様だ。

なんて惨めなんだ。

話を聞いた七篠さんは「もっと早く気付いてあげるべきだった」と言った。

七篠さんが付けた症状は「適応障害」だった。

「これからは毎日朝来て」

一本早い電車に乗ることになった。


朝だけの付き合いになった。

ホットショットは起きる時もあったし起きない時もあった。

入試が近付いていた。

「三年間全然勉強してこなかった僕と掛けて19世紀のヨーロッパと解きます」

「その心は?」

「大後悔時代」

「大航海時代は19世紀じゃないわよ」七篠は大笑いした。

ツヨシは大学を三つ受けることにした。

一つはチャレンジ校、そしてマンモス校、すべり止め。

今からやっても遅いので赤本だけ解いた。

いつもパーテーションの中で気が落ち着くのを待った。

ポンポンと肩を叩かれた。

「今日、残ってね」

「残業ですか」

入試の前日、七篠さんの部屋に招聘された。

「上がって」

不自然な間仕切り。

奥の小さな部屋に通された。

ファンシーな雑貨。

「広いお家ですね」

「両親と住んでるの」

七篠さんはティファールでお湯を沸かしていた。

取っ手が取れる。

「折り合いが悪くて」

「ふーん」

七篠さんがツヨシの手を取った。

「大丈夫の魔法」人人人と手の平になぞってくれる。

誤解しちゃうだろ。

「暗記は得意なんです」

「私も美術好きだったんだよ」

「へー」

「私の高校生の頃の絵、見せてあげる。教室の机の上に置いとくね」

「はい」

「だいじょぶ」


それから幾日かして、放課後の教室。

ツヨシの机の上にボール紙が丸めてあった。

広げてみる。

水彩だ。

トイレットペーパーだらけの富士山の絵。

「泣き富士」と書いてある。ツヨシは少しだけ笑った。

裏返すと、kの文字があった。

西陽の日溜まり。

ショックが抜けない。ツヨシはソファに横になっていた。

「いつ帰ってきたの?」


入試でもホットショットが起きた。

大丈夫の魔法は使わなかった。


その日は保健室に行かなかった。

「先生、」七篠さんを呼び止めた。

「あなたに嫌われたくないから、転校します」


外の階段。

円い雲。

七篠さんといっしょに屋上に上がった。

「カンニングのkですか」

「カンニングはcね」

「結婚してたんだ」

「kamisamaのkよ」

knifeのkだろ。

「サインコサインタンジェントからつまづいたんですよ」

「須田くんもウソついてる」

恋でも愛でもない。ラブだった。

「カンニングしてない」

「ムーミン好きなんですか?」

「娘がね」

ツヨシは肯いた。

「一度はフられてみたいもんですよ、男って」


マンモス校にも落ちた。

「N大学。いい大学だよな」せせら笑うようにハッタリが言った。

「どこ?」後ろで囁き声。

もう寝たフリはしなかった。


「アホ ボケ バカ 死ね カス」黒板に大書きして学校を辞めた。


バスストップ。

成田行きのバス。

ツヨシは一人でバスの外を見ていた。

七篠さんの姿。

「須田くん」

窓を開けた。

「モモヘさん!」

バスが走り出した。

見えなくなってから七篠は溜め込んだ涙をそっと流した。

涙が出る音が聞こえた。

ツヨシは目をこすると、目に溜まった涙がポロと出てきた。


それから数年後、ホットペッパーを立ち読みしていた。

ユーミンの「グッド・ラック・アンド・グッドバイ」が流れていた。

「先生、ゲラ出来上がりましたよ」

「先生って呼ぶのやめてください」

ラルフローレンで着飾る。

水嶋みずしまさん」

水嶋さんはラノベ作家だったツヨシを小説に引き抜いてくれた編集者だった。

「君はアダ名で呼ばないねえ」

軽く微笑んだだけだった。

「眠り猫」恋が実る話だ。


氷河期に生まれたかった。

「ゲンジヅ」

三年みとせは時計台を見上げた。


いつもあの人は読んでるだろうか? と気にかけるのだ。

薄荷の匂いがした。


海が嫌いになった魚の鱗の目。

「行ってきます」

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