第5話 姉は弟との初登校ではしゃぐ
「視線だけで二桁は死んだ・・・」
「あはは、まぁ頑張れ少年」
今日から航大と登校だ
正直嬉しい。
でもさ
ちらっと弟を見上げる。
「なに?」
「べつに」
幸せだぁ・・・うへへ
お母さんが時々連れてきた男の子。
最初は遠くからこちらの様子を伺っていた。
その姿はまさに新しい場所を警戒する小動物のようだった。
猫みたい
私はにこって笑って見せると安心して近寄ってきた。
やっぱり猫だなぁ
その子はあたしを見上げると遊んで欲しそうにこちらを見あげこてんと首をかしげて見せた。
やば!犬かもしれない!
そんな感じで、初めて会った時から気になる男の子だった。
聞けば自分とは従姉弟だと言う。
だから最初から親近感あったのと妙に納得した。
その彼とも親同士が再婚して、ついに昨日から姉弟になった。
私は本当のお姉ちゃんになれた。
「・・・何気持ち悪い顔してるの」
失礼ですね
私は鏡を取り出してこっそり見た、
そこには気持ちが良いほど笑顔が映っていた。
「僕達の事みんな知ってるの?」
「んー」どうかなあ
もったいないから誰にも言ってないよ
そんな私を見て大きなため息を付いた。
「僕の平和な高校生活は終わった」
「大丈夫だって」 たぶん
自慢では無いが、私は結構モテる。
3年になってまだ2日しか経っていないけど、5人には告白された。
「ねえねえ聞いて!昨日も告白されちゃった」
今日も航大に報告する。
彼に隠し事は絶対たくない。
それが恋愛でも
「ねえ、なんで俺に報告するの?」
「えー隠しておく必要なくない?」
「いやむしろ言う必要なくない」
ひどい!
「航大はあたしが他の男と付き合っても平気なの!お姉ちゃんがお嫁に言ったら誰が御飯作るのよ!」
「いや普通に僕が作ってるよ」
そうだったかなー
「結局琴葉って今まで誰とも付き合ったこと無いよね」
「いやーお付き合いってさ、めんどいよね。後しんどそう」
「それは同感」
「でもあたしが言うのも何だけど
私が真面目な話をすると戸惑うみたい。
「幼馴染との事ほんとにこのままでいいの。あたしとしてはその方が親友の恋を応援できるから良いんだけどさ」
「しょうがないじゃん」
一度怒った彼女は手がつけられないらしい。
いつだって航大のほうが先に折れていた
彼女が悪くてもそれは変わらない
「昨日は説明もできなかった」
「そうなんだ」
意外と思うかもしれないけど、私と風花ちゃんとの接点は少ない。
「あたしあの子に嫌われてるんだよ」
何度か合う機会を設けたけど、その全てをスルーされた。いまだに顔も知らない
曰く 時間の無駄
航大の周りをうろちょろする女は全て敵らしい。航大が好きなんだね
「だからあたしも敵認定されてる」
「嬉しそう」
えー
「ふふふ、何でも無いよ」
いつ会ってくれるのかな
*
「琴葉おはよー」
「おはよー風花」
今日も一番乗りは風花だった。
彼女とは高校で始めて知り合った同士でもある。
「それで例のもの持ってきた?
「ふふ、あたしに抜かりはないわよ」
「でもほんとに似てるよね」
この物語に出てくる主人公の弟が航大にそっくりなんだ。
見つけたのは偶然。
今までその手の物に興味はなかった。
「これどこに有ったの」
「ん?航大の部屋」
あたしがそう言うと
彼女は顔色が失くなった。
「まずいよ勝手に追ってきちゃ
うーん、大丈夫だよきっと
「何でそう言い切れるの」
「だって同じ本がダンボール一箱あるんだよ」
「へっ」
それってひょっとしたら
「自分で自分のこと書くんだ? ナルシスト?
「でも航大くん絵かけるの?」
あ・・・
「絵は壊滅的だった」
少なくともあたしは見たことなかった
「誰か別の人が書いてるんだ」
それは何となくだけど、まだ見ぬ幼馴染のような気がした。
私はもう一度冊子を見たけど
そこにあるべき名前はなかった
もしこれが彼女が描いたとしたら
その想いは私の比じゃないくらい重いよ
私は幼馴染がこのままあっさり身を引く筈はない。そう確信した。
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