初心者クエストⅢ②
カナザワシティから離れること30分。ようやく、人が
「この辺でいいかな?」
「はい、問題ありません」
周囲を見回せば、たくさんのポムスラが気持ち良さそうに飛び跳ねていた。
「とりあえず、片っ端から倒そうか」
「はい!」
こうして、『初心者クエストⅢ』を達成すべくポムスラ狩りを始めた。
相手は、攻撃手段も乏しく、
んー、これはどうなんだ?
パーティーは組んでいるものの、互いが黙々とポムスラを狩り続ける。
果たして、これはパーティープレイと呼べるのだろうか?
とは言え、ポムスラ相手にパーティープレイらしい作戦など立てる必要はないし、洒落た話題を提供するスキルも持ち合わせてはいない。
ただただ、気まずいな。
無言で狩り続けること10分。
周囲のポムスラを狩り尽くしてしまった。
「あら? リポップとかないのか?」
「リポップ……?」
「あぁ、モンスターがわき出ることね」
「へぇ、アオイ君は物知りですね」
「物知りというか、一般的なゲーム用語だな……ってか、移動しなきゃダメなのか」
「現在の討伐数は37体ですね」
「ってことは、後13体……移動しようか」
「はい!」
俺とカリンは、新たな狩り場を目指して、移動することにした。
「アオイ君は強いですね!」
「そうか?」
「はい! だって先程もモンスターを一切りでバッタバッタと倒していたじゃないですか!」
カリンは俺の真似だろうか、空手でブンブンと刀を振り回す仕草をする。
「カリンさんの弓もかなり凄かったぞ」
「えへへ……。でも、倒すのに毎回2回射抜かないとなのでまだまだです」
「ん? 一発で倒してるときもあったよな?」
「あ! あれは、スキルです」
「へぇ、そんなスキルあるのか」
「はい! 【パワーショット】ってスキルです。……あれ? アオイ君はスキル使っていました?」
「……どうだろ? 使っていたことになるのか?」
【青龍の型】を構えてから攻撃していたので、スキルを使っていたとも言える。
「ひょっとして、アオイ君の攻撃は全部スキルだったのですか!?」
「いやいや、流石にそれはないな」
「――?」
俺の答えを聞いて、カリンが首を傾げる。
「えっと、俺のスキルは――コレだな」
俺は、腰に差してある刀を抜刀すると、右足を前に半身となり、左の脇をしめ、柄をへその位置に、切っ先を木偶の喉元へ――【青龍の型】を無詠唱で構えた。
「アオイ君のスキルは
「……そうなるな」
アクティブスキルではない劣等感から気恥ずかしくも、頷くが、
「――! 素敵ですね!」
「――? ん? そ、そうか?」
カリンは両手でパンっと柏手を鳴らし、目を輝かせる。
「はい!
「お、おう……」
何かのスイッチを踏み抜いたのか、カリンの言葉が急激に熱を帯びる。
「なるほど! 正しい構えを実践出来ているから、アオイ君はあんなにも強いのですね!!」
カリンはフンフンと鼻息荒く、興奮状態だ。
構えフェチなのか……?
構えが大切なのは事実だろう。しかし、誤解は解いておくべきか。
「……違うな」
「――?」
「えっと、俺の強さの秘密……というかポムスラを一撃で倒せた理由は構えじゃなくて、武器だな」
攻撃師範からの入門祝い――見習いの刀を貰ったことで判明したのだが、多くのプレイヤーが現在愛用している見習いシリーズと比べて、武器としての『千姿万態』はかなり強力だった。
「そうなのですか?」
「カリンさんの弓は『見習いの弓』かな?」
「はい」
「見習いの弓の攻撃力は?」
「6ですね」
6か……。見習いの刀(攻撃力9)よりも低いのか。
「なるほど。攻撃力はSTRに武器の攻撃力を足した値だろ? 将来的にはそこにスキルとかクラスの補正値が入る可能性はあるけど、初期である今だとシンプルに算出できる」
「ふむふむ」
カリンは足を止め、俺の言葉に耳を傾ける。
「今のカリンさんの攻撃力は?」
「先程レベルが上がったので……攻撃力は19になりました」
「なるほど。俺の攻撃力は46なのだが……」
「46!? 私の倍以上ですね!?」
「内訳を言うと、STRが16で武器の攻撃力が30だな」
「凄い刀ですね!」
「そそ。だから、俺が
「なるほどー」
と、ステータス談義に花を咲かせながら歩いていると――視界に初見のモンスターの姿を捉えた。
錆びたナイフを片手に、全身が緑色で二足歩行する小型の亜人型のモンスターだ。
(ゴブリンです。危険度は
危険度
「
「アオイ君にお任せします」
カリンは背負っていた弓を構え、俺の目を見て頷く。
任せるね……。半ば作業と化していたポムスラ狩りには飽き飽きしていたところだ。
「とりあえず挑んで、危なくなったら逃げようか」
「はい!」
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