少年ジャンプ片手に
ラッパぷっぷの助
プロローグ
―――
それは何故か? 答えは簡単だ。それ程長い時が経った、というだけのこと。
時代は新暦を迎えた。人格を持つ機械が生まれた。
だが人々は怠惰になった。怠惰は例外なく人の心を支配した。
やがて経済は機械が動かすようになり、その内情を知る物はいなくなった。
テクノロジーは進歩の兆しを見せず、それどころか次々と失われていく。
そして...娯楽すら、時の流れは蝕んでいく。
努力も、勝利も、友情にすら、世界は興味を失くし始めている。
それでは物語を始めよう。熱い想いを、思い出せ。
少年ジャンプ片手に・第一章「努力・勝利・友情」
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『おはようございます。新暦683年7月23日、朝のニュースをお送りします。キャスターは私、
「へぇ、T地区の廃ビルが倒壊かぁ...気をつけなきゃ」
「優~! これ見て!」
掃除の行き届いた床に座る少女が、立ち上る湯気で曇った眼鏡を拭きながら、キッチンカウンターの向こうで珈琲を注いでいる中性的な出で立ちをした若者に声を掛ける。
「ビルの倒壊? 物騒だねぇ。何事もなければいいんだけど...」
鈴のなるような穏やかな声音で話しながら珈琲を啜るのは、この家の主、
「大丈夫だよぉ。そんな心配しなくても」
淹れたての珈琲にしかめっ面をしながら急いでミルクを注いで応える彼女は、名前をセラという。
セラは2年前、この東統合国風空日本区エリア3‐5にある一軒家に住む優と出会い、居候することになったロボットの一体であり、優の生活を手伝いながらともに暮らしている。
「そうかい? うーん...分かった。じゃあ、今日も調査を頼むよ。セラ」
「ん! じゃあちょっと行ってくるね、優!」
「うん、行ってらっしゃい」
調査というのは、優がセラに頼んでいる事の1つだ。旧暦3000年代の技術復興に熱心な優を、セラは技術遺産の発掘をすることで支えている。
セラは、唯のロボットというわけではない。というより、この時代に存在するロボットと呼称されるもの全てが、唯のロボットではない。彼女らに搭載された
ヒューマシーンとは、AIの革命家と呼ばれた科学者集団
ヒューマシーン搭載のロボットは、そのほとんどが後に開発された
ヒューマシーンは、人口駆体のお陰でこの東統合国風空日本区エリア3-5にある一軒家に住む優と出会い元来人よりも若干ではあるが強い体を持っており、それが発掘という作業に適しているのだ。それに、セラ自身も意欲的にこの作業に取り組んでいる。
(セラもよく頑張ってくれている。僕も頑張らなくちゃ)
優は現在、旧世代兵器システム再興へ向けて研究を進めている。
怠惰が世界を包んで早数十年、一部の超富裕層たちはその居住区を実質支配している。
優は、
(自分でも大それたことなのは分かってる。でも、セラのおかげでここまで来たんだ。絶対にこの世界を変えて見せる)
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「ふうっ! 今日はたくさん遺物が見つかったなあ...これを見せたら優が喜ぶぞ〜!」
ここは旧東京、すなわちエリア3の第五番地区である。急速な発展の中、かつての東京は微塵の面影もなく、その輝きを砂埃の汚れへと変わっていった。
と言っても、この時代においては東京が煌びやかな土地であったことを覚えているものは誰もいない。
「今日のごっはん〜はな〜んだ〜ろな〜っ! オムライスかな! おそばかな? お 鍋かなぁ!?」
だからこそ、見つかることはなかったのだ。
「...ん? あれ? あれれ?」
ありし日の、熱き
「本がある。題名は...」
これは、世界に熱を取り戻し。
「少年、ジャンプ?」
退屈な
プロローグ「堕落」
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