2

 どうやら店長は、散歩をしながら限定メニューを何にするか考えていたらしい。

「フルーツサンドとかもありなんだけど、温かい飲み物と一緒に、且つそこまで張り切らなくても食べられるものがいいよなぁと思ったのよね。」

「確かに、フルーツサンドは食事にもなりますしね。パウンドケーキの方が、お茶に来た人でも注文しやすそうです。」

「隣にはバニラアイスを添えちゃおうかな?」

「いいですね!味変にジャムとかソースとか添えたら最高かも?」

「うわ!それありだわ〜!さすが柳くん!」

 店長と柳さんが限定メニューを練っている。あまりに楽しげなふたりの会話は、1番卓のお客様にも届いていたようで、帰り際に

「期間限定のメニューが始まるんですか?楽しみです!また来ますね!」

とコーヒーをお飲みになっていた方が声をかけてくれた。

「光栄です。自信作になりますので、またのご来店をぜひお待ちしております。」

 ふたりの話し声と、ルーズリーフにメモをしている音がBGMに加わる中、お会計とバッシングを済ませて調理場に戻った。


 あっという間に店内にはパウンドケーキの甘い匂いが漂ってきた。

「この焼いてる時の香りがたまらないですよねぇ!」

 幸せそうな柳さんの声に、店長が楽しそうに笑う。

「私も好きよ〜!同じことを思っているだなんて、なんだか嬉しいなぁ。」

 柳さんに作ってもらったカフェオレを飲みながら、僕もパウンドケーキが焼ける様子を一緒に見ていた。

 普段提供しているデザートは手作りのアイスやジェラートのみになっている。トースト以外を焼いているのはかなり珍しい。

「佐伯くんは、これ見てどう思う?食べたいなぁってなる?」

 先程メモ書きをしていたルーズリーフを見せてくれた。白いお皿にパウンドケーキ、みかんのコンポートとバニラアイスを添えるらしい。

「上にも中にもみかんが入っているんですか?」

「そう、中にも入れちゃった〜。その方がきっと美味しいかなぁって。」

「すごく美味しそうです。コンポートもアイスと一緒に食べたらきっと美味しいだろうな、と……」

「それ絶対美味しいですよ!早く食べたいなぁ。」

「佐伯くんも柳くんもそう言ってくれるなら絶対美味しくなるわね!楽しみだわぁ。コンポートは明日また味見してもらうね。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る