今度こそ蟄居について  三日目 (五の日)

 親愛なる我が従弟殿。


 昨日はすっかり話がれてしまったね。蟄居ちっきょという言葉については誰かに訊いてくれただろうか。


 結局のところ、牢や一室に押し込めたいわけではないけれど、宮廷や所領で自由に動かれては困る――私に対する措置については、そういうことのようだ。


 ちなみに、陛下からはラウウォルフィアに現れたら命は無いと思え、と直々にお言葉を頂いている。

 君に会うことが叶わないのなら、私としてもわざわざ足を向けたい場所ではないから、まったく構わないけれどね。


 そのようなわけだから、僧院の私の部屋に外から鍵が掛けられているということはない。むしろ安全のために、内側から自分でかんぬきを掛ける始末だ。

 残念ながら私には敵が多い――多いのかな? ――ということで、大主教猊下からしつこいくらい注意を受けた。


 まあ、私の身柄を預かる立場としては、私に何事かあっては大変だからね。

 その「何か」というのが単に暗殺や襲撃というのなら分かるのだけど、どうも僧院には……別の危険もあって……いや、君にこんなことを話すのはやめておこう。ひとつ言えるのは、剣や槍のみならず、体術の鍛錬は怠らない方がいいということかな。


 おかげで出入りは私の都合でどうとでもなる。これは存外、便利なことだったよ。

 どうしても猊下の説法や、私に付けられた教授たちの講義に気乗りしないときは、出ていかなければよいだけだからね。もちろん、一生閉じこもっているわけにはいかないから、その後部屋を出たときに食らうお説教は覚悟しなければならないけれど。


 想定外だったのは、これで領事から解放されるとばかり思っていたのに、そうでもなかったことだ。

 それについては、また今度書くことにしよう。

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