部活動紹介にて+部活動紹介の後にて

 部活動紹介は、菜々美ななみ達一年生の前で、二三年生らがパフォーマンスをした後、恐らく部長、副部長が紹介するといった流れだ。


 殆どの部活が、紹介する時に水原涼香みずはらりょうかへ視線が向いていたが仕方が無いだろう。


 別に部活に入る気の無い菜々美は、そんなところを見ていた。


 だが、次の部活動紹介は菜々美の聞いた事ある部活だった。昨日、ここねと食堂で昼食を飛べた時に言っていた。


「家庭科部です」


 家庭科部として、一人の女子生徒が立っている。昨日、菜々美も見たその生徒が口を開く。


「えーっと、家庭科部。部員募集、以上……え? まだ? うーん……」


 家庭科部部長である、内田花耶うちだかやは堂々とした様子で腕を組んで考え込む。


 やがて、一言一言を捻り出す。


「部員はボク一人だけ……えー、誰も入ってくれなかったら今年で廃部……活動日は週二回、主な活動は文化祭でのお菓子販売……あー、詳しいことは今日の放課後に家庭科室で。で大丈夫?」


 なんとか言葉を捻りだした花耶は、袖で待機している教師に向かって確認する。


「以上」


 どうやら大丈夫だったらしい。それだけ言って、花耶はその場からはけていく。


 菜々美は始まる前に配られた、各部活動の紹介がされた冊子を見る。家庭科部の欄はシンプルに一言、『部員募集中』とだけ書かれていた。


 部員が欲しい割には、募集する気の無い紹介文なのだが、花耶はこういったものが苦手なのだろうか、と菜々美は考えるのだった。


 

 その後も他の部活の紹介が続き、ようやく終わって教室へと戻ってきた。


 教室へ戻る途中、やはり半分ぐらいは、水原涼香はどの部活に入るか、の話をしていたが、教室へ戻ると、涼香の話は無くなり、それぞれどの部活が良かったかの話になった。


柏木かしわぎさんはどの部活入るとかあるの? 私は家庭科部!」


 菜々美のその話をしているというか、話しかけられていた。


「いえ、私は部活には入らないわよ。えっと、内田さんって……」

「そうなの! 家庭科部の部長は私のお姉ちゃん!」


 菜々美の右隣の席である、内田麻耶まや楽しそうに話す。


 菜々美も、麻耶と花耶の今にも眠ってしまいそうな目を見て、もしやと思っていたのだ。


「やっぱり、似てるわね」

「そうでしょー」


 えへへと、心の底から笑う麻耶。


「内田さんも家庭科部に入るの?」


 すると横から声がかかる。


 菜々美は声の主を知っていたが、麻耶はまだ知らなかったため、ピクリと肩を震わせる。


「急に話しかけてごめんね。芹澤せりざわここねです」

「あ、芹沢さん。よろしく……えっと、芹沢さんも家庭科部に……?」


 さっと菜々美と麻耶の間に半分挟まるようにやってきたここね。


「まだ決めてないんだけど、昨日誘われたんだ」

「誘われたって……お姉ちゃんに……?」

「うん」

「へ、へえ、そうなんだ」


 そう言いながら、一瞬目を伏せる麻耶。


「うん。だから、この後家庭科室に行きたいなあって。一緒に」


 この会話に入ることのできない菜々美は、他人事のようにしていたが――。


「柏木さんも一緒だよ」

「なんで⁉」

「だって、わたしと二人とだったら、内田さんも気まずいだろうし」


 確かに、互いと少なからず関わりのある菜々美にもきてもらった方が、気持ち的には幾ばくか楽だろう。


「そういうことね。それなら分かったわ。内田さんもそれで大丈夫かしら?」

「うん」

「じゃあ決まりだね!」

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