双子人形の日常

いちごはニガテ

第1話 ある休日

 特殊流動化金属ハイドロイドのボディーを持つ双子人形ツインドールのビバームスの朝は早い。

 本日は月に一度の休日にもかかわらず、普段通りにアラームが鳴り始める瞬間に眼を覚ました。

 これは彼女がハイドロイドである事とは関係なく几帳面な性格からである。


 現に同一個体であるステラは、毎朝の起床に複数のアラームを使い、それでも起きられず簡易浮遊端末ライトビットに物理的に起こされる体たらくであるからだ。

 これはもともとの気質の違いもあったのだが、ツインドールである彼女らの内のビバームスが片割れの人格であるステラを甘やかし、それを受け入れ続けた結果である。


 自分自身を大事にするのは当たり前ではあるが、一つの身体に二つの人格を持つツインドールとゆう亜人種は、その傾向が強く現れることが多い。

 現在はハイドロイドのボディーにビバームスの人格を複写する事によってその身体を共有することもなく、二人の人間として個別に行動する事が可能となっている。


「あっ、………今日は休日か?」

 身体をお越し下着姿のままのビバームスが小声でつぶやくと、羽織るものを手にした浮遊端末フルビットが無言で傍らによってくる。

「ニュースを投影してくれ」

 ベッドから降り立ちガウンを纏ったビバームスが、フルビットに命じると浮遊画面フロートビジョンが投影され最新のデータが高速で無数に切り替わってゆく。

「次は今月の売上と資産の推移を…」

 それを持ち前の異能で処理してゆき、次を促す。


 僅かな時間で膨大な数字を読み取り高速思考にかけられるのは、彼女達ツインドールの特質である。


 だが、こんな事を日課にしているのはビバームスのみであり、同じ個体であるはずのステラは、その能力を滅多に使う事は残念な事にあまりなかった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る