第3話 いつもと違う朝
『ピピピピ…ピピピピ……』
今日も目覚まし時計のうんざりするようなアラーム音で起きる…はずだった。
「ねぇ、起きて。もう学校行く時間だよ」
目覚ましのアラーム音の代わりに、聞き慣れた声が寝ている俺の耳に入ってきた。
「もう少し…寝かせて…」
「だめ、学校間に合わなくなっちゃうよ」
まぁミコがそう言うなら仕方無い、ミコがそう言うなら…え、ミコ?俺は昨日のことを思い出し、慌てて布団から飛び起きた。
「昨日のは夢じゃなかったのか…」
「ちゃんと現実だよ」
「はぁ…」
どうやらこれは現実らしい。可愛い女の子に起こされるなんて、世の全ての男子が憧れる理想のシチュエーションなのだが、俺は状況が飲み込めず呆然とする他なかった。そんな俺を見かねてミコが言った。
「学校、間に合わなくなるよ…」
「あぁ」
とりあえず俺は学校に行くことにした。まだ状況を理解したわけではないが、かと言って学校を休むわけにも行かない。俺はこう見えても真面目なのだ。
一通り支度を済ませ、部屋を出て階下のリビングへ向かう。しかし、ミコは部屋から出ずに少し寂しそうに手を振っていた。
「ミコは行かないのか?」
「私は人間じゃないし、それに私の姿をマスターの親に見られたら、マスターが女の子を部屋に連れ込んだと思われるよ」
「た、たしかに…」
「私は元のデータの姿に戻ってこの部屋で待ってるね。気を付けて学校行ってきてね…」
ミコが俺の前に現れた目的は俺を尊死されるためなのだろうか…
ーーーーー
「お前、なんかいいことあったの?」
学校に行く途中で会った友達の翔太に言われた。
「え、なんで?」
「いや、なんかいつもよりニヤニヤしてんなって」
女の子に起こしてもらったのだ、ニヤけるに決まっている。コイツは無機質なスマホのアラームで起きたのだろう、可哀想に…
「なんでそんな憐れむような目で俺を見てんだよ」
ちなみに俺がボカロPであることはクラスでは勿論、1番仲の良い友達である翔太にすら言っていない。俺の中では最高機密事項なのだ。
学校では、それはそれは平穏な時間が流れていった。授業中はずっと昨日から今朝の出来事をフラッシュバックしていた。俺の前に現れたあの奏音ミコは一体何なのだろう…
そんな感じで過ごしているとあっという間に6限の授業が終わった。授業は全く聞いていなかったが、学校の勉強なんて授業を聞いてなくても、前日に徹夜で暗記すれば赤点回避くらいは余裕である。部活には入っていないため、友達と別れそのまま家に直帰した。
「ただいま」
親に一声かけて、すぐに自分の部屋へ行った。
「おかえり!!」
扉を開けると、笑顔のミコが出迎えてくれた。
俺、もうこの部屋から出たくない。
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