転生魔王と転生女神の異世界攻略

水姫 唯

嫁を探すために魔王やめます

「結婚ってどんなものなんだろうな」


 目の前にいる部下たちにそう尋ねる。


「全員未婚の我々に質問してどうするんですか」

「だよなぁ……ちょっと相手探してみるか」

「どうしてまた急にそんなことを?」

「暇だし、気分」


 世界の統一は果たし、もはや敵うものもいなくなったこの魔王は暇つぶしの一環として結婚を考え始めていた。原因は定期的に来る部下の結婚報告だ。子供ができたとかそういうのもくるし見るたびに興味が湧いてきたというのが本音だ。


 ただこの魔王の相手ともなればそうそう見つかるはずがないのも事実、実際過去に暴走した一人の部下が相手を探したがふさわしい相手(本人の独断)が見つかることはなかった。


「……異世界、か」

「転生でもするので?」

「ああ。んじゃアルス、後は任せた」


 一番信頼している部下であるアルスにそう告げて魔王は自身の部屋に引きこもる。


「任されました、ヴァレリア様」


 去っていく魔王の背中にアルスが恭しく礼をする。



 ***



「さて……始めるか」


 部屋の中心に座り込み目を閉じる。その瞬間いくつもの水晶球のようなものが部屋中に現れる。


 これは探知魔術を極限まで昇華させたもので別の世界、次元すらも観測できるようにしたものだ。それらで同時に数百、数千もの世界、次元で自身の嫁候補を探していく。一つの世界にかかる時間はわずか数秒、条件に合うものがいなければすぐに次を探すその繰り返しだ。


 ———そして1ヶ月が経った。


「この世界は……」


 見つけた世界は少し馴染みのある世界だった。


 だがそんなことは今関係ない、急いで転生を構築する。そして部下宛てに適当にメッセージを残し転生魔法を起動。


 自分の肉体、精神、魂が分解されて世界を越えていく。


 こうして実に2億年もの期間支配を続けた魔王は世界から姿を消した。

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