佇思停機(ちょしていき)
【
思い煩い、心の働きを止めてしまうこと。(仏教語)
楽しく文字と戯れてきた鳥尾巻ですが、書くのも読むのも嫌になったことが何度かありました。
文字変態もたまには挫折します。
高校生の頃、自分が見た夢の話を、夏目漱石の『夢十夜』のように書き綴っていたことがあります。
自分ではよくできたと思って、その時仲良くしていたクラスの友達にこっそり見せたのです。彼女は絶賛してくれて、小説を書いたノートを一日貸してほしいと頼まれました。
そこまでは良かったのですが、次の日学校に行くと、そのノートがクラス中に回されていました。
何しとんじゃわれぇぇ!
と、思ったのは言うまでもありません。断りもなく人のノートを見せて回るなど言語道断。皆「面白かった」と言ってくれましたが、そういう問題ではありません。
当時、まだ人見知りの殻を被っていた鳥尾巻は、怒り狂いたいのをぐっと堪えて、ノートを返してもらい、彼女とは絶縁しました。そして、褒められたことより、羞恥の方が強く、しばらく小説を書く気になれませんでした。
卒業して、大学でまた腐女子仲間が出来たので、創作活動再開です。美術系の大学だったので、みんな絵が上手くて、中にはプロの漫画家になった人もいました。
最初のうちは楽しかったのですが、まだまだ青二才だった鳥尾巻、周りと自分の作品を比べて少々、いや、かなり絶望します。自分にしか作れないものを突き詰めようなどという気にはなれなかったのです。
紆余曲折の末、実家に戻ってから庭で豪快にお焚き上げしました。絵も小説も全て灰になった翌日、鳥尾巻はなぜかインドに旅立ったのです。
嘘のような本当の話です。まあ、他にも色々原因はあったのですが、インド行きの飛行機に飛び乗り、そのまま1か月放浪。
これについては長くなるし、このエッセイに関係ない話なので割愛します。
そんな訳で豪快に創作放棄!
時は流れ、結婚し子どもも生まれ、読む暇もなく。子どもに絵を描いてあげたり、架空の話を語り聞かせたりはしましたが、書くことからも遠ざかっていました。
なかなかに困難な結婚生活に区切りをつけ、やめた時と同じくらい唐突に降ってきた話をスマホで書き始め、いくつかの小説投稿サイトに投稿。
設定を作る暇もなく、書きながらメモした物語は、実はまだ完結していません。
でも心が動き出した。
死ぬまでに完成すれば良いと思っています。今は自分の好きを詰め込むのが楽しい。
つづく
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