青息吐息

 唐突に「引っ越すぞ」と言い出す父に振り回され、小学生の頃は転校ばかりしていました。


 世間の荒波に揉まれるうちに、それなりに社交性を身に着けたものの、やはり落ち着くのは学校の図書室。

 家には大人向け小説しかなかったので、ほとんどの児童図書は小学校で制覇しました。転校した先々で図書室の貸し出しカードを数枚綴りにしていた記憶。


 それとは別に、社交性を身に着けた鳥尾巻は、生来の性格だったのか、得た知識で友達と悪戯をすることが増えました。あと、超マイペースだったので、決まった時間に学校に行けず、よく遅刻・早退・無断欠席を繰り返していました。


 厄介な子どもです。


 先生に悪戯して反省文を書かされることもしばしば。騒ぐタイプの問題児ではなかったけど、しれっと悪戯するので先生も手を焼いていたかもしれません。


 ある時、先生が説教中に「ヴィクトル・ユゴーの『モンテクリスト伯』は……云々」と言い出したので「『モンテクリスト伯』はアレクサンドル・デュマで、ヴィクトル・ユゴーは『レ・ミゼラブル』です」とツッコみを入れてしまって、説教と反省文の枚数が増えました。


 なんという理不尽。


 当時、学校に於ける教師は小さな教室とはいえ権力者です。権力者に逆らうとろくなことがありません。そこは日和見主義・鳥尾巻、反省してるふりをしながら反省文を書きました。


 そうだ、文章力を上げたかったら反省文を書くといいかも、とテキトーなことを言っておきます。

 如何に反省しているか、自分の行動の何がいけなかったのか、今後どうしていけば改善できるのか。顧客 (先生)のニーズに応え、求められる文章を書くのです。もしかしたら鳥尾巻は、求められる文章を書くのは得意なのかもしれない。


 でも、楽しくないことはなるべくしない主義です。

 

 教科書を貰ったら最初に全部読んで、授業中はノートにラクガキしたり好きな本を読んだりして過ごしていました。教科書をなぞるだけの授業は退屈だったからです。あと、課題図書で読書感想文を書くのが嫌いでした。


 そう、楽しくないことはなるべくしない主義なのです。


 その主義が祟って、国語はともかく理数系が壊滅的だったので、よく、追試とレポートで勘弁してもらっていました。

 同じ文字でも数字の羅列だけは、見ていると眠くなるのです。


 たまに文章力を褒められても、反省文とレポートによって培われたとはあまり大っぴらには言えないのでした。(言っちゃってるよ)


つづく

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