新世界の絆は永遠に(Les liens du nouveau monde sont éternels)
黒のクワメと白のシレシア
プロローグ
これは、とある剣と魔法のファンタジー世界、『エルノット=カライエ』で始まった壮大な物語なのである。
北の大陸、『エール=エックスシリア』にて、二つの大国が『西ロッテ』という地域の覇権をめぐり争っていた。『西ロッテ』が両国にとって、聖地とされているからだ。
だが、謎の魔物の大量発生『ザー・ランペイジ』が『西ロッテ』を中心に起こった1011年の神光歴になったのを機に、『サン・ルヴェリア神聖国』と『シルヴァンデル大王国』という2大国が両軍の疲弊した状態を顧みて、ついに『アル―リンコット条約』にて停戦を結び、両国にとっての約15年間の休息ができたのである。
だが、その次の年である神光歴1012年にて、『シルヴァンデル大王国』のとある田舎の『レメニア地域』を統治している伯爵家の『イーストン家』にて、衝撃の出来事が起こった!
朝、リチャード・フォン・イーストンとエリニア・フォン・イーストンのもとに待望の新しい家族の一員が間もなく誕生しようとするので、夫婦二人が浮かれてる気持ちで朝食を取っている。彼らは興奮しながら、貴族の家系に誇りを持っていた。
しかし、その期待とは裏腹に、彼らが迎える新しい生命は予想外の特徴を持つことになるとは、誰も予想出来なかったのである。
「あーあぁ...、エリン、我が愛しい妻、もうすぐ我々の家に新しい命が加わるんだね。これからは家族が一層華やかになることだろう!ぎゃははー!」
「ふふふ、そうね、リーちゃん~。私たちの家族はますます栄えていくわ。新しい子供が生まれるのって、こんなに心躍るものはないわね~!」
もう生まれてくる日も近い、身籠った腹の子が。
先日、家を訪ねてきたお医者さんが診断したところによれば、もうすぐ二週間しか残ってないと聞かされたので、今は待ち遠しい気分を抑さえながら日々を送っていく二人。
やがて、その日が来た!
産声が響く中、助産婦が新しく生まれてきた赤ん坊を手に抱えてリチャードとエリニアのもとに持ってきた。
「おめでとうございます、リチャード様、エリニア様。ご子息が誕生いたしました」
「おおううーー!!さて、我が子よ、さっそくその愛らしい顔を見せてくれ!」
「うふふふ~。どんなに可愛い顔をしているのかしらね~~!」
助産婦が抱いている赤ん坊をリチャードとエリニアの前に差し出すと、二人は瞬間的に息を呑む。赤ん坊の肌は彼らとは異なり、濃い褐色を帯びていた。
「なあーっ!?こ、...これは…、こ、これはどういうことだー!?」
「~~っ!じょ、助産婦、何かおかしいことがあったのではないかしら?きっと、これには何かの間違いがあるからなんだわ!」
「いえ、エリニア様。全ては正常です。ただ、お子様の肌の色が我々のものとは異なるだけで、それ以外には何も問題はありません...」
「...そ、そんなぁ....」
「......」
リチャードとエリニアは赤ん坊の濃い褐色肌を見つめ、驚きと戸惑いを隠せない表情を浮かべた。まあ、驚くのも無理はない。
ここは『エール=エックスシリア』という北の大陸であるので、住民の殆どが薄い肌色の人間だ。無論、白色人種の中にも日焼けした人が存在するが、誰もこの赤ん坊みたいな異様な(比較的に)濃い褐色肌を持っていないのである。
だから、両親の二人はどれも白い肌をしているのに、産まれてきた子供がそうじゃない肌色を持っていること自体、おかしいのはずだ。明らかに遺伝子がかみ合っていないからである。
でも、これはまだ二人にとって、序の口に過ぎない。
何故なら、これからの日々が、予想外の展開を迎えることを彼らはまだ知る由もなかったからだ。
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