第47話 風邪③
なんとかなりませんでした。
午後三時まだ父さんが帰ってくる予定の時間まで一、二時間あるというのに……。
突然咳はひどくなるし、頭痛は激しくなるし、喉も痛くなってきた。
昼前までの俺なら三、四時間ぐらい全然平気だと思っていたが、流石にこれは三、四時間どころか一時間も一人で待てるかすら危ういぞ…。
俺はどこかにあるスマホを取るためあらゆるところに手を伸ばす。
何かあったら連絡しろと母さんに耳にタコができるほど言われたがまさにそれが今だろう。
なのに……なかなかスマホが俺の手に当たらない!
ピーンポーン…
俺がスマホごときに悪戦苦闘していると突然インターホンが鳴った。
初めはやっと父さんが、と思ったのだがよくよく考えてみると違うのか?、と考えてしまった。
父さんの予想通りだと四、五時にと言っていたのだが一時間前である今にそれらしきものが来ると疑ってしまう。
ズキッ
(あ、いって…)
しかし、そんなことを考えている中頭痛が更に激しくなるように感じてきた。
父さんの予想が全て正しいわけではない。
仕事なら尚更時間が早まったり遅くなったりと頻繁にあるようで予定を軽く超えて帰ってくることなんて実家では度々あった。
俺は父さんかどうかだけでも確認するために寝たきりの身体をベットから起こした。
立った瞬間立ちくらみがしてベットに座ってしまったが深呼吸をしてから再び立ち上がる。
立つ瞬間足元に先ほどまで捜索していたスマホが落ちているのが見えた。
そりゃ見つかるわけねぇか…。
とりあえずスマホは後にして寝室から出る。
寝室から出るとリビング、その奥にキッチンがありそこにインターホンがある。
距離としては十歩もかからないぐらいなのだが、何故かその短距離がとても長く感じる。
俺は倒れないようにゆっくり歩くのだが歩くたび頭に響く感じで再び頭痛が俺を襲う。
なんとかその痛みに耐え抜いてインターホンの前に来た。
「あ…あれ……?」
俺はインターホンの画面を近くで見る。
画面に映っていたのは父さん……ではなく制服に身を包む花守さんが見えた。
どうして花守さんが?と考えてしまうがひとまず通話ボタンを押す。
「は…い」
『あ、こんにちは。江崎さんの友達の花守というものです』
「あ、あの…どうして花…ゴホッゴホッ」
『え、もしかして江崎さんですか?!』
どうしたのか聞こうとしたのだがその前に咳が出てしまった。
それが聞こえた花守さんは相手が俺だと気づいた瞬間驚きの声が聞こえた。
『きょ、今日はお母様がいらっしゃるのでは…』
「母さんは…急遽仕事が入って……ゴホッ」
『ちょ、ちょ、ちょっと待っててくださいね!』
花守さんはそう言うと画面から姿を消した。
それから一分ほど経つと玄関からコンコンッという音がしたあと『江崎さん入りますね!』と言う声が聞こえ玄関の扉が開いた。
玄関の外には袋を片手に持った花守さんがいた。
「花守…さん」
「江崎さん!」
花守さんが来るまでリビングではあるが玄関から見える位置にまで一応移動しておいたため開けた瞬間俺の姿が見えた花守さんは瞬時にこちらにへとやってきた。
「だ、大丈夫ですか?!」
「大丈夫…とは言い切れ……ないかな」
「と、とりあえずベットに行きましょう!」
花守さんは俺の腕を肩に回すとゆっくりと寝室の場所へと向かった。
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