第39話 他人から見た俺

 は?俺?

 俺は何個も頭の中でハテナマークを浮かべてしまう。

 井上さんの口から発せられた人物がどっかの部活の有名なイケメン(いるかは知らない)でもなければ、頭がとても良いで有名な人(いるかは知らない)でもなく、周りから恐れられている俺(ちゃんといる)だった。


 そして、それに驚くのは俺だけではないようで花守さんも同じようで声をあげていた。

 というか、俺があまりの唐突さに声を出しちゃった時、花守さんと声が重なったおかげでバレてないようだけど…。

 もしかして俺まだ神に見放されていない?


「え、な、なんで江崎さんが出てくるんですか…?」

「なんでって……」


 俺が目の前、目の後ろかな?で起きている出来事から思いっきりくだらんことへと脱線しかけたところで花守さんが動き始めたようだ。

 そうだよ、なんでそこで俺が出てくるんですか?



「……花守さん、江崎に脅されてるんだろ?」

「はい?」


 あー……はい?

 あれ?もしかしてそっち系?


「井上さん何を言って……」

「だってそうじゃなきゃ、なんで急に二人が一緒にいるようになったのさ?」

「なんでってそれは……」


 ……。

 まぁそう思われても仕方ないか。

 確かに急にと言われればそうかもしれないな。

 俺と花守さんとの間に別になんの関係もなく、俺にとってはあの日のナンパがあるまで『すごい人気だな』みたいなそんな感じの他人だったしな。


 花守さんは何か、多分ナンパの件についてだろうが喋ろうとするところで井上さんがそれを遮るようにまた喋り始める。


「それに、あの江崎だよ?あんな悪そうなことしてそうなやつ、そんなことやっててもおかしくないよ」

「……」


 いや、すごい言いようだな…。

 しかし、それを聞く限りやっぱ周りからはそんな風に思われているのだろうか?

 まぁもしそうでも俺は別に気にしないというか、慣れたというか、もうどうでも良いのだが……。

 …それでもちょっと寂しいなー。


「あれでもそうしたら榊原くんはどっちなんだろ?前から江崎といるからな、榊原くんももしかしたら…」


 は?

 ちょっと待てよ、それは違うだろ。

 修哉はバカでアホだがいつも俺と一緒にいてくれる優しい親友だ。

 そんな修哉が俺と同じ?

 ふざけんな。

 しかし、修哉が言われていることへの苛立ちとともにもう一つ考えてしまう。


「まぁ、榊原くんのことは置いといて…結局どうなの?正直に言ってよ」


 一緒にいる修哉がこんな言われるとなると……このままだと花守さんたちも同じようにされるのか?と。

 別に自分のことはさっきも思ったがどうだって良い。

 でも、自分以外の、ましてや友人がそんな風に思われてしまうと話は別だ。


 俺と正反対だった人たちが、俺と同じように友人をなくし、俺と同じように一人ぼっちになってしまい、俺と同じように寂しい時間だけを過ごしてしまう。

 それだけは絶対にダメだな。

 でも、どうすれば……。


 俺は真剣に考えようとする。

 しかし、考えても意味なんてなかった。

 だってもうすでにとても簡単で分かりやすいやり方があるからだ。


「大丈夫だよ。俺こう見えても人望は高いん方だと思うし、なんとかな……」

(俺らの関係を断ち切……)

「あの」


 そこまで考えると先ほどまで静かだった花守さんが突然として口を開いた。

 しかし、何故か花守さんの顔を見なくても何か違うような気がした。


「あの、先ほどからあなたはどなたの話をされているのですか?」


 俺はこの時、花守さんから出たのか疑うほど初めてとても冷たい声を聞いた。

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