第8話 帰り道

「ふぅー、美味しかったね」

「はい、おかげでたくさん食べてしまいました」


 満足するまでスイーツを食べ終えた俺と花守さんは、再び電車に乗り帰宅していた。

 ちなみにスイーツ店では相変わらず俺に視線が向いていた…。


「今日は付き合ってくれてありがとうございました」

「いや、俺も楽しかったしこちらこそ誘ってくれてありがとう」


 今日は本当に楽しかった。

 こうやってどこかに行くのは家族や修哉ぐらいでしかなく、新しい友達と行くのは何かと新鮮で楽しかったりする。


 それから電車を降りる駅までに行く数分、お互いの好きなものや休日のこと色んなことを話した。


 駅に着いてとりあえず外に出る。


「帰り送るよ」

「え?一人でも大丈夫ですよ?」

「いやさすがに女の子一人にするのは危ないし」


 時刻は午後十七時、まだ六月下旬であるため一応まだ明るいがこの前のことのナンパのこともあったし一人にするのは危ない。


「そうなると江崎さんの帰りが大変になってしまいます」

「それぐらい大丈夫だよ。それより花守さんの方が心配だ」


 そういうと花守さんは『うーん…』と考え込む。

 しばらくすると顔を上げ申し訳なさそうな顔をしている。


「それじゃあ…お願いしてもいいですか?」

「うん全然いいよ」


 花守さんは『こっちです』と言って歩き出し、俺もそれに着いていく。


(あ、花守さんもこっち側なのか…)


 行った先は俺の帰り道でもあった。


「花守さんもこっち方面だったんだね」

「あれ?江崎さんもこっちなんですか?」

「うん。俺は今マンションで一人暮らしをしているんだ」

「そうなんですね。実は私もマンションで一人暮らしをしているんですよ」


 ここでもまた、お互いを知れる話が出来た。

 というか、花守さんも一人暮らしだったんだな。これから何か困ったら頼ってみようかな…。


 すると左手側に俺の住むマンションが見えてくる。

 ここは七階建てのマンションで一人暮らしにはちょうど良く結構良いところである。

 まぁ今は花守さんを送り届けるので通り過ぎる。


 はずなのだが何故か花守さんはこのマンションの前に止まる。

 どうしたんだと思ったがすぐこちらを振り返り、


「私ここなので送っていただきありがとうございました」


 そう言った。


「え?こ、ここ?」

「はい、ここですよ」


 まじか…聞き間違いとかではないようだ。


「あーえっと…俺もここなんだ…」

「え?こ、ここなんですか?」

「うん、ここ」


 まさか花守さんと同じマンションだとは誰が思うだろうか。

 てか、なんで今まで気づかなかったんだ?


「とりあえず…入りますか」

「はい…」


 とりあえず俺らはマンションに入り、エレベーターに乗り込む。

 俺は三階のボタンを押し、花守さんは四階のボタンを押す。

 確かにこれなら今まで気づかなかったのも頷ける。

 俺は基本外には出ず、中で過ごすことがほとんどである。

 そのため顔を合わせることもなかったんだな。


 エレベーターが三階に着き止まる。


「それじゃあ俺はこれで」

「あ、はい。今日はありがとうございました」


 エレベーターのドアが閉まっていく。

 こうして、今日一日が終了したのであった。

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