不良だと勘違いされてる俺に学校一の美少女が友達になりました

香湯

第1話 智の日常

「それでよ…って、やべ!さとるだ…」

「やっぱ、怖いね…」

「あの絆創膏、また喧嘩したのかな…」


 江崎えざき智が高校に入学してから早くも六月となり、高校への通学路にも、視線にも見慣れてきていた。

 少し辺りを見回すとサッと顔を伏せてしまい、ハァとため息が溢れてしまう。


 何故こういった反応がされているのかというと、原因は俺にあった。

 身長およそ百八十センチ後半、少々目つきが悪く、他の男子よりも声が低い。

 そして、小学生の頃、交通事故に遭った時に出来てしまった、おでこから右の頬にかけて針で縫った後に残った大きな傷。それが江崎智である。


 ほとんどは生まれつきでしょうがないとはいえ、周りの人から見れば完全に不良と思われてしまう容姿で中学時代は大変であった。

 しかし、俺は不良ではなく、喧嘩の経験など皆無でテレビのドラマや映画でしか見たことがない。

 ちなみに左の頬にある絆創膏は昨日猫を見かけたので触ろうと近づいたのだが、猫に怒られてしまいそのまま頬を引っ掻かれたのである。


 でも、こんな猫でできた怪我ですら、俺が不良だと勘違いされているせいかまた喧嘩かという感じで済まされているのでさらに悲しくなる。

 そんなこんなで今日も周りに怖がれながら高校へと向かうのであった。


____________


 教室に入るまでもやはり周りは視線はすごく、廊下を歩くが先ほどまで話していた生徒は話をやめてこちらを見ながら、友人と小声で話していた。

 ほんと、泣くよ?結構うるっとくるからね、これ。


「智、おはよ」


 自分の教室に入り、鞄を机に置くと前から一人の男子が手を上げてやってきた。

 小学校からの付き合いで唯一俺の親友でいてくれる榊原修哉さかきばらしゅうやである。

 こんな俺を前にしても怖がりもせずなんならニコニコ笑顔のまま話しかけてくれるのでとても気が楽だ。


「おはよ、修哉」

「で、突然で悪いが今日の放課後暇か?」

「あぁ…。すまん今日はバイトあるんだ」

「あれ、今日バイトあったか?」

「先輩が風邪をひいて、代わりに入ってくれないかって」


 一応俺はここから少し近いカフェでバイトをしているのだが、やはり見た目もあって自主的に裏方の方にしてくれないかとお願いした。

 前、一度だけでいいからやってくれないかと言われて渋々やったが結果は言わずとも分かるだろう。

 そういうと、修哉は納得した顔をした。


「そうか、じゃ仕方ねぇな」

「ちなみに何するつもりだったの?」

「ん?俺とお前含めて八人ぐらいでボーリング行きに」

「俺いちゃダメだろ」


 どう考えても修哉を除いた全員驚いて理由取り繕って帰るやつだろ。


「なんで?」

「俺いたらみんなビビって帰るだろ」

「そら外側だけでの判断だろ。中身知れば大丈夫だって。なんなら俺から宣伝してやろうか?」

「絶対信用しないだろ」

「お前の人間関係って大変だな」

「今さらだろ」


 本当、俺の人間関係を作るなど馬鹿みたいに大変だ。

 しかし恥ずかしながら俺はもっと友達が欲しいという小学生みたいな願望があるので頑張らないといけない。


「まぁ、俺ももっと友達が欲しいよ」

「俺が紹介してやろうか?」

「お前ってすごいよな…。なんでそんなに友達がいるんだよ」

「いや、お前が少なすぎるだけだと思うぞ」

「ぐっ、何も言い返せない」


 修哉は何も言い返せない俺を見て笑った。

 なんか腹立つし、悔しい。

 

 それから俺らが他愛のない話をしていると担任が教室に入ってきてホームルームが始まるので修哉は席に戻っていった。

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