彼らは十六歳になった
日端記一
第1話
彼は、ハルは十六歳になった。
身長一八0センチ少々高い背丈と精悍な顔つきは、異性に多少のことながら好意の目を向けさせた。
高校に入って三ヶ月経った。多少の友人ができた。高校生にしては珍しく、悪意のある他人へのいじめや暴力は教室になかった。全体の勉強の出来は他の学校と比べると秀でて良かった。この状態を評価すると、非常に居心地のいい学校生活が送られるであろう。
初めての期末テストには、彼の取るべき一位の障害物となる美少女がいた。
彼との体躯と比べると、天才キリエが頭一つ短かった。それが周りには良い収まりの具合として、目に映った。
キリエは、彼にライバル兼友人としての意識を持っていたが、彼は彼女に対して別の感情を抱いていた。
「ハル。今度はあなたの勝ちね。四点差?」
キリエは彼を好敵手としての認識を崩したことは、ほとんどなかった。
ハルがキリエに恋愛としての感情を持った瞬間は幾度もある。といっても、彼女がそれを受け入れようという希望は薄かった。
「キリエは文系の大学へ行くのか?」
ハルはぎこちなく笑った。彼女に対する作り笑いの意図を知ると、彼女は不愉快に思うかもしれない。キリエはハルといつもフェアで、周りの注目の期待と羨望を良しとしていた。
キリエは三位である自分の順位のもう一つ上位にいる、もう一人の美少女の名前に留意した。
「でも、リカにも負けているなぁ」
と、キリエは苦笑いし、ハルに目配せした。
彼女は十六歳となった。
ハルは学校に通うたびに感じる自分が、日々違うものとなる気がしていた。それは確かな感覚としてあった。
自分と教師、友人、勉強各科目、将来への迫りくる存在が、彼らの考えを段々難しくしていた。
今のところ、三人とも良い大学へ行き、気楽な気持ちで過ごすつもりの大学生活を予見するしかないでいた。
リカは無口だ。昨今のクールを気取った中二病でいるつもりではないようだ。他の生徒ともほとんど話をしない。でも遠目で彼ら二人、キリエとハルを注視することはたまにある。
三人とも十六歳になった。少しずつ、彼らの肉体と主義と価値観、当たり前に存在することの近さに、彼らはいつも思春期独特の憂鬱を感じていた。
キリエは、自転車で坂を下り、土曜日の美しい日差しを受けていた。
ハルとメッセージアプリで会話した夜の次に、彼女は小さめのホールケーキとアイスクリームを買った。
キリエが感じるハルの目線に、彼女は恋愛の意識を通している自分に気づいた。
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