ダンジョンで全裸にされた男女、いろいろがんばる(主に男が)
みずがめ
前編
ダンジョン内。とあるフロアの隅っこで、俺は身を縮こまらせていた。
「どうしよう……マジでどうしよう……」
どこからか吹いてくる冷たい風に身を震わせる。心細さが増してきた。
フロアの中央にはでっかい花が特徴的な植物系のモンスターがいた。触手らしきものをうねうね動かして威嚇でもしているように見えるが、隅っこで震えている俺に興味を示していなかった。
だからってあのモンスターが安全ってわけじゃない。むしろ、とんでもなく危険だってことを俺は知っていた。
「あのモンスターに消化液みたいなもんをかけられたせいで……防具どころか服まで消えてしまった!」
それが何を意味するのか? それが一番重要で、できれば言いたくないことであった。
まあ、つまり……、今の俺は全裸なのだ。
もう言い訳の仕様がないほどの真っ裸。ダンジョンで全裸とか、どうしようもないほどの痴漢である。
幸いだったのは、人体に影響のない消化液だったことか。……いや、全然幸いじゃない! 裸で無一文にされた俺をどうしてくれる!
さすがに裸のままダンジョン内を歩く勇気は俺にはなかった。だって他にも冒険者が探索しているのだ。見つかったら恥ずかしいし、下手をすれば新種のモンスターに間違われて攻撃されるかもしれない。……それはないか。
とにかく! 今の俺は待機するしかない。善良な冒険者がこのフロアを訪れたら、布の一枚でもいいので貸してもらおうと思っている。もうそれしかねえ……っ!
なんてことを考えていたら、誰かがこのフロアに足を踏み入れた。
「だ、誰だ?」
できれば知り合いの冒険者であってくれ。そう願いつつ、どんな人物が来たのかと目を凝らす。
俺と同じソロなのか、たった一人、仲間がいるようには見えなかった。
その人物は冒険者らしく、剣と盾を持っているのが見えた。鎧も身につけているが、全身を覆っているタイプではなく、肌が視認できる程度には軽装だった。
「あれ、女じゃね?」
見える部分からでも女性らしい身体のラインがはっきりしていた。とても珍しいが、女一人でダンジョンに潜っているらしい。
「さすがに女の前で裸をさらすのはなぁ……」
せめて男がいるパーティーなら声もかけやすかっただろう。女一人の場面で、全裸の俺が声をかけたら言い逃れができない状況に陥ってしまう気がした。
俺が助けを求めるかどうか悩んでいる間に、その女冒険者はフロアの中央にいる植物系モンスターに近づいていく。
「何このモンスター? あまり見ないけれど……新種なのかしら?」
好奇心が勝ったのだろう。触手をうねうねさせているが、一向に攻撃してこないモンスターを観察しようと女冒険者がさらに距離を詰める。
「あっ、ダメだ! そのモンスターに近づいちゃいけないっ!!」
「え?」
気づいた俺が声を上げた時だった。
植物系モンスターの触手が急に女冒険者を襲ったのだ。目的もなくうねうねさせる動きしかしなかったのに、数を生かして彼女の身体をからめとった。
「きゃああああああぁぁぁぁぁっ!?」
絹を裂いたような叫び声がフロアに響き渡った。
それもそうだろう。怪しげなモンスターの触手に拘束されてしまったのだ。身動きが許さない状況に叫ばずにはいられない。……俺もついさっき同じ目に遭ったし。
モンスターの攻撃はこれだけでは終わらない。
「きゃっ!? な、何!? 身体がねばねばする……っ」
ブシュッ! と音を立てて触手の先から粘性のある液体が放たれる。白く濁った色をしたその液体は、女冒険者の身体をまんべんなく染めた。
「ああ……もうダメだ……」
俺は絶望した。あの液体を浴びては、この先の結末を逃れられないと知っているからだ。
「え……? と、溶けてる? 嫌っ、嫌ぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁーーっ!!」
白濁色の液体が染み込んでいく。触手で捕らわれた女冒険者の装備品を溶かしていった。
剣や盾。鎧どころか下着まで溶かしてしまう。俺も最初にあの液体を浴びた時に同じ反応をしたものだ。このまま自分も溶かされてしまうのだと恐怖した。
まあ、今俺が無事でいるように、あの液体は装備品を溶かすだけで人体にはまったく影響がなさそうなんだけどな。
「そこの君。落ち着くんだ。モンスターをあまり刺激するんじゃない」
「嫌ぁっ! 嫌だぁーーっ! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇーーっ!!」
「ダメだ。全然聞こえてない……」
女冒険者はじたばたしながら叫び続けている。完全にパニックになっているようだ。
あの植物系モンスターが何を考えているかはわからない。だけど、俺を襲った時は装備品を全部溶かした後は解放してくれた。刺激さえしなければ無害なモンスターかもしれない。いや、貴重な装備品を溶かされた時点で大損害だよ。
ブシャアァッ! と、また音がした。
それは触手の先から液体が発射された音ではなかった。女冒険者が暴れたことにより、溶けかけた剣の刃先が触手を傷つけた音だった。
切れ味がいいのか、触手から勢い良く白濁液が飛び散った。痛みでも感じているみたいにモンスターが悶える。
「な、何!? 今度は何っ!?」
女冒険者が目を剥いて驚きを見せる。
モンスターが花粉を撒き散らしたのだ。毒々しいピンク色の花粉が、女冒険者を包み込む。
咄嗟に吸ってはならないものだと判断し、俺は距離を取った。
けれど、触手で拘束されている女冒険者に逃げる術はなかった。明らかに人体に悪そうな色をした花粉を吸い込んでしまう。
「うっ……まぶたが重くなって……意識が……」
うつらうつらしたかと思えば、カクンと、女冒険者の頭が垂れる。
「おい! だ、大丈夫か!?」
声をかけるが、女冒険者に反応はなかった。まさか毒だったのか?
「すやすや……」
「ん?」
微かに聞こえてくるのは可愛らしい寝息だった。どうやら女冒険者は眠らされただけだったようだ。
抵抗がなくなったのをいいことに、モンスターは白濁の粘液をぶちまけて女冒険者を汚していく。植物なのになんだか気分良さそうに見えてしまう。どういう欲求であんなことをしているのだろうか?
「あーっと……結局やられてしまったか……」
すべての装備品を溶かされてしまった女冒険者は裸で床に転がされた。まだ粘液が付着しており、とても卑猥だ……。
満足したのか、植物系モンスターはフロアの中央で、何事もなかったかのように触手をうねうねさせる状態に戻った。冒険者を全裸にさせるモンスターってなんなんだよ!?
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