決断

 生まれた時、母は亡くなった、私は生まれながらに母の命に助けられ生きている。

 仏壇の写真の中で母は笑っている、手を合わせ心の中で私はありがとうを言う。それが私の日課だった十代の頃、いつしか感謝を忘れ十も歳の離れた女に夢中になった。

 その女は付き合ってしばらくすると他の男と遠い街へ行った。失恋だった、初めての。女を追うか諦めるか、私は母の見守る小さな家の布団の中で数日悩んだすえに、潔く諦めることを選択した。

 そこから私は人が変わったように、この世界の秘密を調べ始めた、来る日も来る日も古代の文明から連なる人類の叡智の元となる始まりの全てを調べて調べて調べ尽くした。文字通り人生をかけた大仕事だった、たかが女にフラれただけでこうも人が変わるとは、自分の心変わりの速さには自分でも感服する。

 そういえば、十も歳の離れた女はオカルトが好きだったな、UFOを見たとよく言っていた。本当かどうかわからない、しかし私はその女のことを信じていた、だから今こうして地球から遠く離れたこの星にいるのだ、イイ決断をしたと褒めてあげようではないか、あの時のわたしを。

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