彼女にはかなわない

ゆゆし

エピソード1  斎藤さん

「彼女、悪気はないと思うけど…

悪気がないと直らないから諦めた方が良いと思うな。

あっ!だけど悪気がある人よりはマシだね」


いつも彼女の理論には唖然としてしまう。


先日も仕事でミスをして落ち込んでいるだろうと声をかけた私に


「全然落ち込んでない

落ち込んでミスが無くなるなら落ち込むんだけど」

「落ち込んでいる時間がもったいないし」

「やりたいこと、いっぱいあるから」

とぬかしていた。


そうだった、彼女はそうなんだ。


後輩が仕事で悩んで泣いていた時も、

「泣いたらスッキリするから泣いた方がいいよ」

「泣いても何も解決しないから私は泣かないけどね」

「男性の前で泣くのは卑怯だからやめてね。その可愛さに涙ときたら、ある意味犯罪になるから」


と普通の顔に普通の声で言い放っていたんだ。


言われた後輩は、さすがに涙が止まり、口をポカンと開けてしまった。

私は後輩が「えっ?」と漏らした声を聞いてしまった。


その時、彼女の言葉に絶句したのは後輩と私だけで

なんと、上司達は、目立たない様に小さく笑っていた。

しかも、いつも彼女の言動には上司の口元が弛むし、なんなら、何を言うんだろうと興味津々にも見える。


いや

絶対に楽しんでいるとしか思えない。


ちなみに、彼女の名前は斎藤さんという。

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