「かもめの誘惑」

薄曇りの空

冷たい風

広がる海

遠くに見える島

今私は灯台を独り占め


風が私の体を揺らすのに

風の音も波の音さえもが聞こえない

すぐ目の前に風を受けてとどまるかもめ

こんなに近く こんなに同じ高さで

そこにかもめがいる


ふっと 腰までの高さの柵を越えたら

強い風を受けて目の前のかもめと一緒に

この大空を飛べそうな気がした

ほらおいでよとかもめは誘うかのように

翼を広げ強い風に逆らってそこにいる


手を伸ばして

そのまま超えてしまいそうな

かもめの誘惑に負けてしまいそうになる刹那

すーっと我に返る

風の音がした


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