「幸せの青いビー玉」

晴れた早朝 氏神さまへのお詣り

人気のない境内

朝の陽の中で それは光った

通り過ぎて 何かにひかれるように引き返す

白い砂利の中に ぽつんとビー玉がひとつ

拾い上げたガラス玉は 空を映したように青く透き通る

ふいに浮かんだフレーズ “幸せの青いビー玉”

手水で洗い胸ポケットに

お守りのように持っていれば幸せを運ぶ?

いや小さな傷はきっと子供のわすれもの

滑らかな球面に映る自分を見つめながらふっとよぎる

自分を映すその奥に別の顔が浮かぶかもしれないと


どっちがいいんだろう?

私のポケット それとも

翌朝の境内にそっとビー玉を置いた

明日の朝もまだここで見つけることができたら

きっとそれは幸せの青いビー玉


そして 次の朝 薄曇りの空の下に

もう一度見つけることはできなかった

太陽のせいじゃない

子供の手に戻ったの?

私が手放した幸運は別の誰かのものに?

それとも 誰かがどこかで 覗き込んだガラスの奥に

自分とは違う顔を見ているかもしれない

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