逃亡令嬢‼~このままでは破滅するらしいので家出させてください~
春鏡凪
第1話
桜舞い散るこの季節。騒がしい教室を尻目にまだあどけなさが残る少女は外を眺めながらふふっと笑みをこぼす。
ここはルシファー高等学校。
中二病だった初代校長が、我が名を与えてやる、光栄に思えとかなんとか言ってつけたらしい。(ルシファーは悪魔の名前)
名前からしてやばい学校だが中身はちゃんとした普通の学校である。
そしてこの学校にはどうやら今日から転校生が来るらしい。
それに少女は笑みを漏らしていたのだった。
しかも少女の隣の席は空いている。転校生が座るなら多分ここだろう。
真新しい学校。そしてまだ少しかたい真新しい制服。
少女は期待に胸を膨らませながらまた笑う。
『ふふっふふふヒャヒャヒャハハハ』
あれ?笑み?
「はい、ナレーター!!マイク寄越せね」
え?ちょっt……
こんにちは!!みんなの愛されゆるふわ美少女主人公ガラス(笑)だよ!!……おい誰だ勝手に(笑)つけたやつ。
私です(ナレーター)
サブのナレーターは放っておいて、「え」私は今、夢の第一歩を踏み出そうとしている!!
私の夢とは……そう少女漫画のヒロインになること!!
今座っているのは主人公席と名だかい窓際の後ろの隅っこ!!
外には舞い散る満開の桜。
そしてお決まりの転校生。
いや〜ラブコメ始まっちゃう?始まっちゃうのか?
始まっちゃうよな〜こんな青春の一ページみたいな場面そうそうないもんね
だってこれは純粋青春恋愛小説だもんね?
敵とか命の危険とかまーーーったくないもんね!!(フラグ建築中)
さぁ、誰が来るかな?誰が来るかな?
イケメン!!イケメン来い!!
そして私と恋をしろ!!
ペシッ!!
突如として私の頭が何かに叩かれる。
後ろを振り向けば、ストレートボブの茶髪頭が目に入った。
「何すんの、菜鈴!!!顔面国宝のわたしの顔に傷がついたらどうしてくれる!!何か気に食わないなら暴力より言論を選べ!!」
彼女は菜鈴。私の幼馴染であり、親友。多分少女漫画で私がヒロインならば、彼女は主人公の背中押すポジだと思う。そんな彼女が私を叩くなんて、思い当たる理由が全く見当たらない。
「何か文句があるなら言ってみろ!!」
すると菜鈴は息をスッと吸った。
「顔がうるさい、行動が気持ち悪い、自己肯定感高すぎ、顔面平均以下、あんたに対する文句なんて大量に湧いてくるけどまだ聞きたい?♡」
「イエ、イイデス」
こんなんだけどいいヤツなんだよ?多分(自信はない)
「みんな静かに〜!!ホームルーム始めるよ!!」
ガラガラと音を立ててクラスに入ってきたのはみんな大好きちびっ子先生乃木っち、今日もメガネが一層輝いておられます。
『はい!ではSTを始める前に!!みんなにお知らせがあります!!今日からこのクラスに転入生が来ました!!さぁ、入って!!』
そう言われて入って来たのはきれいな金髪のちびっ子。外人だろうか?顔はよく見えないがどうやらかわいい系の類っぽい。
なんだ高身長イケメンじゃないならいいや。
クソぅせっかく少女漫画のヒロインになろうとツンデレの練習してたのに!!
そんなこと思ってたら一個机を挟んで隣の菜鈴の方から多分お昼ごはんだったであろうバナナが飛んできた。
うん、美味しい。(←食った)
『はい、じゃあ自己紹介お願いします』
乃木っちがそう言うと転校生は今まで俯いていた顔をあげる。
その顔を見てクラス全員が息を呑んだ。
なぜなら……透き通るように美しい肌、乾燥なんて知らないような唇。そして極めつけは彼の瞳は宇宙を覗いているような不思議な輝きを持っていたからである。
私と並ぶ美貌の持ち主……。
フフフ、面白い男。
キメ顔してたらまた菜鈴が今度は殺気を放って消しゴム投げてきた。
それを華麗に避けたはずだったが見事に鼻頭に当たった。
解せぬ。
それにしても乃木っち……。見たことあるはずなのにあんたは驚かんでも……。
そんなわたしたちの反応を知ってか知らずか構わず転入生は口から声を出した。その顔はニコニコしている。
『こんにちは!!僕の名前は「カミ」。突然だけど……』
そう言って何かを探るようにポケットをまさぐる転入生。
手品でもするのだろうか。
転校初日で爪痕残そうとするタイプなのだろうか。
そして彼が取り出したのはどこに入ってたんだってレベルの杖。なんか女神とかが持ってそうなむっちゃ長い杖。
え、この学校中二病っぽい名前してるけどもしかして転校生くん、そっち方面のお方で??
『君たちには死んでもらいます♪』
ふざけたことをニコニコ笑顔で言っているあのショタに、はい?とそう言おうとしたときだった。私達の教室の上からものすごい音がした。この音は……多分雷だ。近くに落ちたのだろうか?私が首を巡らせようとするとなぜか動かない。なぜ?
私はどうにか目を回して周りを見る。周りは黒焦げでさっきまでの日常はないようだった。
ああそうか雷は私達に落ちたんだ。
徐々にまぶたが重くなる。
あぁ、私死ぬんだ。夢を叶えられずに。せめて最後に少女漫画体験……したかったな。
そう思いながら私は目を閉じた。
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