【カクヨム短2023中間突破】半分実話、本当に奴隷を買えるチャンスを逃した日

石のやっさん

第1話 本当に奴隷を買えるチャンスを逃した日


時代は昭和、僕は歌舞伎町の深夜薬店でバイトしていた。


ここを選んだ理由は、深夜の時間の時給が破格値だった事...そしてもう一つの理由はここの店長に誘われたからだ。


元々は水道橋の店で働いていたが、もう少しお金が欲しかった、そうしたら同じチェーン店で池袋と新宿には深夜番があり時給が高い事を教えて貰えた。


そして、一番時給が高いのが此処、新宿歌舞伎町店だった。


暫く、お試しでシフトに入ったら、店長に気に入られそのまま此処の専属となった。


店長は基本奥で寝ている事が多い。


この店は場所柄物騒なので、店長はお店から余り離れない。


実際に店長がさぼっているから首にするという話もあったが、他の人が入ったら3日間位で


「辞めさせて下さい」


そう言って辞めてしまった。


それ以来、ここのお店は、有賀さんしか出来ないと言われ、他の店長に代わる事も有賀さんに文句を言う人も居なくなった。


まぁ、お客はヤクザに風俗嬢にホスト等、夜の仕事の人ばかりだし、普通の人じゃまず、勤まらないだろう。


「歌舞伎町の深夜番になりたい? 本気で言っているのか?」


これが、僕が初日に有賀さんに言われた事だ。


その言葉の意味をすぐに思い知る事になった。


 僕は初日からやらかしてしまった。


「お前は俺を舐めているんか?なぁ、なぁ」


僕が言ってしまった一言で今、僕はヤクザに絡まれている。


悪口なんて言ってない。


ただヨイショしようとした結果がこれだ...


ただ、褒めただけなのに...こうなった...



高額のドリンクを一気飲みしていた、その姿が男としてカッコ良く思えた。


だから、素直に、カッコ良いと褒めただけなのに何やら琴線に触れ怒らせてしまったようだ。


奥から有賀店長が飛んできた。


そして間に入ってくれた...


「こいつさぁ、ヤクザのマンガをよく読んでいて、本当にカッコ良いと思っているんだよ...許してくれないかな...」


「有賀さんがそう言うなら本当の事なんだろうな...じゃぁ、揶揄ったんじゃないんのか...そうか、カッコ良いか...だが坊主こっちにはくるなよ...あぶねーからな」



そう言うと笑いながら、僕の胸ポケットに1万円札をねじ込んで帰っていった。



「良かったな、それで美味しい物食べるなり...楽しい事すればよいんだ!明日もまた来いよ」


「はい」



その事件の後は問題なく、僕はここ歌舞伎町店の遅番となった。



このお店の面白い所は、色々と社会の裏側を見る事が出来る事だ。



これは、その一つの物語。



「いよーっ、少年元気か?」


声を掛けてきたのはヒロさん、所謂、麻薬の売人だ。


ここ歌舞伎町店は、本当に危ないお客が多い。


だが、しっかりとみかじめを払い、色々な人間が此処を使うせいか、直接的に悪さはしてこない。


僕は麻薬はやらない...そして、この店に居て色々な知り合いがいるから無理やりは売っては来ない。


「泉ちゃん...女要らない? いまなら結構な美少女プレゼントしちゃうよ?」



ちなみに、僕が彼女を欲しがっているのは、身内では結構有名な話しだ。


こういう場所にいると...そういうネタで結構からかわれる。


主に、風俗のお姉さんやキャバクラのお姉さんから...色々とね。


僕は「愛のあるSEXしかしない」とかっこつけて体面を保っている。


「何時もので良いですか?」


「ああっ頼むよ」


僕が冷蔵庫からドリンクを取り出し箱から出してヒロさんに渡すと、ドリンクを飲みながら話し始めた。


1本3000円のドリンクをヒロさんはよく飲んでくれる常連だ。


この薬局では、こういう話は聞いても聞き流すのがお約束だになっている。



ただ、美少女が貰える...この響きは流石に聞きたくなった。


「どうして美少女が貰えるんですか?」


つい聞いてしまった。


「実は、ヒロのお客さんの中にそこそこの美少女がいるのよ...今迄は援助交際をして稼いで薬買っていたんだけど...最近取り締まりが厳しいんだよね」



「それで?」


「うん、だから、泉ちゃんが彼女にお金をあげるの、そうしたら彼女はヒロから薬買えるじゃん! その代わりに同棲でもして尽くして貰えば良いじゃん?」


「家族とか問題になるんじゃないですか?」


「訳ありみたいで、中学から友達の間を転々としているらしいよ...だから大丈夫!ヒロが保証してあげるよ」



「だけど、ヒロさんの薬って高いんじゃないんですか?」



「彼女だと大体 月8万円位かな? 泉ちゃんが払えないような金額なら話を持って来ないよ!」


「だけど、捕まったら...不味いでしょう」


「そうならない様に、家には薬を持っていかないで、その場で使わせるようにするよ...これなら安心じゃない?」



不味い、危ない話なのに...どうしても聞き入ってしまう。


「少し考えて良いですか?」



「良いよ! 3日間位...だけど、これヒロは薬代が入るし、彼女は薬に困らなくなるし、泉ちゃんは何でもしてくれる彼女が手に入ってWINWINな状態じゃない?最高だと思うけど...ね」



「考えますね」



そして暫くしてヒロさんは女の子を連れてきた。


凄くかわいい...ちょっと大柄だけど、顔立ちは幼い...ピアスを沢山していて...髪が茶髪...それ以外は正直好みだ。


美少女というのも頷ける。


ミニスカートも似合っていて、凄くエロイ..



ここから何が起きるのか?


何も起きない...僕がいま此処に居るのが答え...


確かに良い話だけど、麻薬は怖い...


それに相手が未成年なので更に怖い...


『有賀店長から絶対に不味い事になるから断った方が良い、やるなら前科がつく覚悟が必要だぞ』


そう言われ...


他のお客からも『ヒロは何回も捕まっているから、危ないよ』


そう忠告されたので...断った..



だが、もし、僕がもう少し悪い奴だったら...


悪い事をする勇気があったら...



何が起きたのだろうか?





そちらを選べなかった僕には..その答えはもう解らない


※今回は【カクヨム短2023出品】ようにこれ一話です。


もし、需要があるなら、将来的にシリーズにするかも知れません。

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