人質たるものの復讐曲~プロトロ/ザ・エリニュス・アリナ プロジェクト「トロ星」シリーズライトノベル PTRS/THE ERINYS ARINA
内嶋つまる
プロローグ 燈火の合図
プロローグ 燈火の合図
戦火が延々と広がるこの世には、どう生きるのか、もうわかってる
強い恒心あるのみとかの話ではなく、妥協とかでもない。
罪だろうと、仇だろうと、信念だろうと、意志だろうと
ただ、復讐に集中するだけ
「永遠に止まらない復讐曲」
僕の名前は
次郡守の兄
お陰で姉貴たちと母上と一緒にわりと平和な生活を送ってきた。
だがいま、果てのない海の真ん中にある舟で、北の国へ人質生活をはじまろうとしてる。
「生っちゃん、きてきて、新しい着物用意したよ、はずかしがらないで、おねえちゃんに楽しませてくれよ」
「わあ、かわいい、女の子みたい!むしろ羨ましい!」
「もう一着あるよ、きてみて」
「女々しい、けしからん、我が明立家の息子にふさわしくぬ」
「おい、二人ともここで何をしている。早く捕まえ!」
なんか五月蠅い声が脳みそを翻弄しておるが…
「なっくん、一番星が再び現れるとき、また会おう、ね」
えっ、目くすぐったくなる。忘れていけない人、いたっけ。
そうだ、思い出した。自分が人質になるだけで済む話じゃない。
大事な人、失ってしまった。
時間遡って、天聖13年(海洋暦6116年)の時期だった。
月帝国の
これを実際に統治するのは、我が「
でも、父上と兄上は明らかに、領地の管理に興味津々だ。
いや、興味津々というより、何かが企んでいるように見える。
こういう歴史はさっておき、僕自身は何者か。
正明11年(海洋暦6011年)生まれ、たった105年の年月を送る若者である。
自分で言うのが可笑しいが、僕は姉貴たちと母上にとって可憐な男の子の存在だった。
逆に、その「可憐」と、魔法の才能がないせいで、父上と兄上に嫌われ、役に立たない者と思われ、軽蔑の表情、虐待の挙動、しょっちゅうにあった。
そういえば、俺、「魔法を司る神聖なる家」の息子にふさわしくないなあ、役に立たないのは事実だし、道理でそんな結末なわけだ。
いや、なんか、なぜ俺が人質になるのか、もう一つ理由があるらしい。
「
実際は「神に捧げる者」を「盗もうとする」ことであった。
一人の少女が、生贄、つまり「人柱」に選ばれ、統治者の代わりに神の救いを求める必要な神事らしい。
我らの家族、統治者でありながら、「神聖たる家」として、代々神との交流の役をはたしておる。
数千年を渡り、こういう「神事」も、我らの家族が担うのに違いない
生贄である少女は、僕の一番愛しい人だ
「俺と一緒に逃げよう、こんなの理不尽だよ」
「でも、お父さんとお兄さんにばれたら、なっくん、どうなちゃうの。わたしのこと構わないで」
「そんなの、無理だよ、ほうっていくわけにはいかないんだ。このままじゃ一生会えないよ。そんなこと、できるわけないよ」
「扉開けろ、奉行所だ。さっさと出ていけ」
「はなせ!はなせって言ったんだろうか」
目に浮かぶのは、忘れ草が、散り果てていく
どうしようもない
「かまくらあやくらはなくら神々様どもよ、われわれのつみをお許し、捧げ者を用意した次第でござまし、どうかお許しお願い所存」
ひとりの少女が、数え切れない財宝とともに、崖の下の波に流されただけ
想像するだけで、はけそう
海の真ん中、霧が散らなく
ふっと、灯台っぽいところで、燈火が現れる
入港許可の合図かもしれねえが
人質、もしくは奴隷生活の始まりの合図に違いない
ぼく、いいえ、俺が
いつか、いつか、こんな理不尽な世界を、変えてやろ
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