鳴り止まない歓声

宇宙(非公式)

〔天使〕

 ある男は、全知全能の神に聞いた。

「あなた様が全知全能ならば、あなたが持ち上げられないくらいの重い石を作れますか?」

 神様は全知全能だから、無論作り上げた。男は笑って、続ける。

「では、それを持ち上げてみてください」

 この日、神様の全知全能は脆く消え去った。わけはなかった。


「なんでですか?」

「それはね、後輩くん。悪魔を知っているかい?」

「質問を質問で返さないでくださいよ」

「悪魔を知っているかい?」

「先輩、クスリやってます?」

「質問を質問で返さないでくれよ」

「悪魔くらい知ってますよ」

「じゃあ、悪魔の権限が何か知っているかい?」

「そんなの知るわけないじゃないっすか。俺みたいな低級天使に」

「悪魔はね、人を殺せるっていう権限を持っているんだ」

「ズルじゃないっすか」

「それに、殺した人間を、誰の記憶からも消せる」

「クズじゃないっすか」

「後輩くん、眠いからって、自分から電話をかけたのに返事を適当にしちゃいけないよ」

「いいじゃないっすか」

「最近は悪魔も見なくなったなあ」

「そうっすよね」


 電話越しの音声が途切れ、代わりに小さいいびきと寝息と、「おやすみ」と言う声が聞こえてくる。彼は寝ると、寝言でおやすみと言う癖がある。

 通話を切り、ため息を吐いて数字に向かう。天使の仕事は山のように積み重なっている。

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