第43話
「いいから出てこい。 今日はグラウィルに会いに行くぞ」
無駄な時間を極力減らしたいフィーディアンは、リリーフィアの布団をめくりながらそう言った。
すると、涙目をきらきらと輝かせたリリーフィアと目が合う。
「おとうしゃまにあいにいくなの?」
少し高揚感を感じる声でリリーフィアは聞き返した。
フィーディアンがそうだと頷けば、嬉しそうに起きる。
そんな幼子に朝の支度をさせながら、フィーディアンは思っていた。
"なぜこんなに簡単なこともできないんだ?"と。
「おはようごじゃいましゅなの!」
満面の笑みで食事の席につきながらリリーフィアは言った。
「おはよう…って、え!? なっ、なんでリリーフィアがこんな一瞬で泣き止んでるの!?」
「なんでだろうな」
目を丸くしているシャラーティルに、フィーディアンはにやりと笑ってみせた。
もぐもぐと美味しそうにご飯を食べるリリーフィアにみんなの顔から笑みがこぼれ落ちた。
***
目が覚めて、どこを見回してもリリーフィアもシャルロッテもいない。
ましてや妖精すらもいない。
このだだっ広い屋敷にいるのは使用人くらいであった。
「寂しいな」
ボソリとグラウィルが呟いた瞬間だった。
目の前がパァッと明るくなり、突然虹色に輝くゲートができた。
その向こうには妖精の国が続いており、シャルロッテを先頭にシャラーティル、リリーフィア、フィーディアンと妖精たちと順々にこちらへやって来る。
「やっほー! 遊びに来てあげたよ、グラウィル」
眩しい笑顔を浮かべながらシャラーティルが手を上げた。
「えっと…。 あっ、遊びに来た…??」
「あははっ! グラウィルが混乱してる」
シャラーティルは頭にはてなをたくさん浮かべるグラウィルを見て笑いながらも、冗談だよと言い放った。
「本当はこの子の親を探しに来たんだ。 ほら、グラウィルにご挨拶は?」
シャラーティルに促されて前に出たペガサスの子供はもじもじとしながら口を開いた。
「はっ、初めまして! 僕はリュクスっていいまちゅ!」
緊張のあまり盛大に噛んだリュクスは、目を白黒とさせる。
それを見たシャラーティルは今にも笑い出しそうなのを必死に堪えていた。
「しゃりゃーてぃりゅ、どうちたなの?」
「いや、なんでも…っははっ! もう限界!」
そう言って笑い始めたシャラーティルの背後に怪しい影が映る。
「あだっ! もう、痛いなぁ、なんだよ」
叩かれた頭を押さえながら振り向けば、にっこりと不敵な笑みを浮かべたシャルロッテが宙に浮かんでいた。
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