第5話

そしてやっぱりと言うべきか、リリーフィアは泣き始めてしまった。

「リリーフィア大丈夫!?」

「大丈夫か、リリーフィア! あっ、魔法使うか!?」

「ハヤテ急いで! リリーフィアに回復魔法かけてあげて」

過保護なサクラとハヤテは、リリーフィアが擦り傷をつくっただけでもおおさわぎだ。


ハヤテは返事をすると急いで魔法をかけた。

擦り傷程度の傷が治ったリリーフィアのことをサクラは優しく慰めてあげる。

「大丈夫だよ、リリーフィア。 もう痛くないからね」

サクラがリリーフィアの頬を暫く擦っていると、だんだん落ち着着いてきたようだ。

「うぇ、うぇ、ひっく…ひっ…く…」

なんとかリリーフィアを泣き止ませると、サクラはリリーフィアの躓いたものを見た。


「リリーフィアは結局何に躓いたんだ?」

ハヤテがリリーフィアの肩からピョコッと顔を覗かせてくる。

サクラとハヤテの視線の先にはリリーフィアが躓いたものがある。

「ねぇ、これって妖精だよね?」

「あぁ、羽が生えてるし…」

そう、リリーフィアが躓いたのは石でもなんでもなく、妖精だったのだ。


その妖精はリリーフィア程の大きさで、藍色の綺麗な羽をしていた。

だが、右の羽の半分から下が不自然に破れていた。

まるで人間に千切られたかのような不自然さだ。

「この妖精、右の羽が千切られてる…」

「人間に捕まったのか?」

サクラとハヤテは顔を見合わせると、ひそひそと相談をした。

「サクラ、よしよしってちてほちいの…」

まだ少しぐずついていたリリーフィアがサクラの服を軽く引っ張って言う。

「いいよ、ほらよ~しよし。 痛かったね~リリーフィア」

サクラは相談を止め、リリーフィアの頭を撫でてあげる。


リリーフィアはにこにこし始めると、やっぱり自分が何に躓いたのか気になったのか、後ろを振り返った。

「……ようせいしゃん?」

リリーフィアは少し間をおいて妖精のことをじっとみつめてから、少し自信なさげにそう言った。


「そうだぞ、妖精さんだ。 良く分かったな、リリーフィア」

「えへへ、フィアえらい?」

ハヤテはえらいと言ってリリーフィアを褒めた。

「ありぇ? このようせいしゃん羽がしゅこちないなの」

リリーフィアは藍色の羽を優しく撫でた。

「そうだな、少し羽がないぞ」

「そもそもなんでここに見たこと無い妖精がいるの?」

再びサクラとハヤテが相談を始めると、藍色の羽の妖精がほんの少しだけ身じろいだ。


「う、うう~ん… あれ? ここは?」

妖精は目を開け、身体をなんとか起こすとそう呟いた。

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