第3話

「それじゃあリリーフィア、私も定位置に戻るね」

スカイはシャルロッテの傍にいる妖精だ。

本人は気が付いていないが、リリーフィアは妖精の愛し子。


そんな大切な存在がこの家でのけ者扱いされていると知った妖精達はこの家全員のことを見張っているのだ。

リリーフィアの傍にいるサクラとハヤテ以外の妖精はみんな担当の人が決まっており、シャルロッテとティファニーには五人ずつ、リリーフィアの父親であるグラウィルには三人の妖精がついていた。


どの妖精もリリーフィアには優しく、他の人には厳しく目を光らせていた。

シャロン家は必ず全員揃って朝ごはんを食べる。

その為リリーフィアは右肩にはサクラ、左肩にはハヤテを乗せて朝ごはんの為に食堂へと向かう。


するといつもは遅い家族が珍しくもう食堂に来ていた。

「おはようごじゃいましゅなのおとうしゃま、おかあしゃま、しゃるりょって」

リリーフィアはワンピースの裾を少し持ち上げながら美しいカーテシーを披露する。


「来るのが遅い、私達をいつまで待たせる気だ」

「そうですわ。 公爵令嬢としての自覚がありまして?」

「おかあしゃま、しょれはかわいしょうでしゅわ。 きっとじじょがいないからじゅんびがたいへんなにょよ」

そう言ってクスクスと笑うリリーフィアの家族達。


リリーフィアは顔を俯けながら席に着いた。

そんなリリーフィアの様子を見て妖精達はリリーフィアの家族を睨んだが、呑気な彼らはそんなことを露程も知らずにしゃべっていた。


「流石、うちの可愛いシャルロッテは今日も妖精達の注目の的だな」

「きっとシャルロッテちゃんは妖精の愛し子なのだわ。 それに比べてリリーフィアは…」

ティファニーがなにかを言おうとしたところでさっきのメイドがみんなに料理を運んできた。

「お待たせ致しました。 本日の朝食でございます」

運んできたメイドはみんなに一礼すると、食堂から出ていった。


シャルロッテ達が楽しく話ながら食事をするのに対し、リリーフィアは無言だ。

「シャルロッテちゃん、今日は私とお茶しに行きましょうね」

「うん、いく!」

「リリーフィアは来なくて結構でしてよ」

ティファニーはリリーフィアに来るなと告げると、シャルロッテと楽しそうにどこへ行くか話し始めた。


「まったく、リリーフィアの扱いだけ酷いよね。 でもそのおかげで今日は外に出れるけどさ!?」

「ほんとほんと、私達のリリーフィアをなんだと思ってるのよ」

妖精達はぷりぷりと怒りながら小声でそう話していた。

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