12
朝陽がカーテンの隙間から部屋へと入り込んでくる。その光で零士は目を覚ました。
隣には柚子が眠っている。
「柚子……」
頬に触れ髪を撫でる。眠る柚子をもう一度抱いてここに柚子がいることを確認する。
あれからなかなか眠れずにいた柚子と零士は、ベッドの中でただ抱き合っていた。
何かを話すわけでもなく、抱きしめ合って存在を確認するように。
「ん……」
抱きしめたことで柚子は目を覚ました。
「あ。起こした?」
首を横に振ると零士にぴったりとくっつく。そんな柚子に柔らかい笑みを浮かべ、もう一度抱きしめる。
今はこうするしかないんだ。
「……あったかい」
「ん?」
「人の体温て、あったかい……」
「暑くない?」
「大丈夫……」
柚子がそれでいいならずっと抱きしめてやると零士は優しく額にキスをする。
◇◇◇◇◇
「柚子。湊、心配してるから電話してやんな」
落ち着いた時に零士はそう言った。
しばらくベッドの中でゴロゴロとしていたふたり。昼近くになってようやく起き上がった。
キッチンの方では零士がコーヒーを入れてる。そんな零士の後ろに回って抱きつく。
「柚子」
「ごめんね……」
昨夜の行動がとても恥ずかしい。
コーヒーを入れてる手を止め、柚子の手を掴んで体制を変える。自分の胸に柚子の顔を埋めるように抱くと背中を擦ってる。
「今はお前が笑ってくれる方がいい」
ギュッと抱きしめる。
(離れたくない……)
柚子はもっと零士とこうしていたいと感じていた。
「柚子」
抱き上げてソファーまで歩く。
「零士さん……?」
ソファーに座らせると軽くキスをした。
「ハラ減ったなぁ……」
「うち……、来る?」
上目遣いで零士の顔を見る。
「え」
「うち行けばなんか作れる……と思う」
今度は俯いた。
それがなんか可愛くて思わず抱きついた。
「じゃ、そうする?」
コクンと頷き、零士と一緒に歩いてアパートまで行く。
昼間こうして歩くことが出来るなんて思ってもいなかった。なかなか一緒に歩くことは出来ない。
それ程、零士の知名度は高い。
今もドキドキしながら歩いている。
ガチャッ。
アパートの鍵を開けると、そこには心配そうな顔をしている湊がいた。
「あ……。た、ただいま」
「おかえり」
零士を見ると「さっさと入れ」と告げる。湊はクルッと反転してリビングに戻って行く。その後ろを柚子は追って行く。
零士が湊たちのアパートに入ったのはこれで2度目だ。
柚子がこっちに出てきてからすぐに自分はアメリカに行ってしまい、戻ったと思ったらあの事件に合ってしまい、柚子はアパートから出ることなかった。
「大学、どうするんだ」
殆どの人が夏休みに入ってしまった大学だが、これからどうするのか湊は気になっていた。
「行くよ。明日、大学に連絡してみる」
湊が大学に柚子の状態を知らせてくれていた。それと同時に学のことも。
警察から大学へと連絡もされているが、湊からも言っておきたかったのだ。
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