018.変身


 その城には吸血鬼が住んでいた……美女の生き血を啜っていた奴の退治を依頼され、昼間にやってきた俺は、棺桶で眠る奴の胸に杭を打ち込んだ。

 これで大丈夫だと思ったのだが、どうも奴は変身して難を逃れたらしい。

 吸血鬼は血を吸う生き物に体を変化させる能力を持つ。

 例えば、コウモリに変身すると、人型の時と同じ質量分の何十匹ものコウモリにと分裂するのだ。


 人より小さなコウモリに化けられたら、杭を打ち込んでも、打ち込まれた部分のコウモリが死ぬだけで、本体は生き延びることが出来るのだ。

 なんとかしなければいけない。

 そっと棺桶を開けた俺はおぞましいものを見た。

 ぷい〜ん。

 ぷい〜んぷい〜んぷい〜ん。×♾️匹


 人形と同じ質量の大量の蚊が棺桶の中にはいた。

 やめろ、俺の血を吸うんじゃない!

 幸いなことに季節は夏。

 俺は常備してあった蚊取り線香を焚いた。

 蚊は一匹残らず死んだ。

 人々を苦しめた吸血鬼を退治したぞ!!

 だがなんだろう、このやるせなさは。そうじゃないだろ感が強い。

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