014.高級マツタケ
魔王を倒してくれと異世界に召喚されて数カ月。
日本食が恋しくなっていた俺は、街を彷徨っている時に店先の貼り紙に目を留めた。
「高級マツタケ、取り扱い始めました」
思わず三度見した。
え?マツタケってあのマツタケ?
秋の味覚の王様の?
ここ異世界だよな?
マツタケがあるならお吸い物飲めるんじゃね?
ダメでも焼きマツタケなら和食の気分になれるんじゃ?
俺はウキウキとその店に入った。
「あのー、高級マツタケあります?」
「運がいいね、お客さん!
小さいけど最後の一鉢が残ってるよ!」
鉢?
どんぶり鉢に入ったマツタケご飯かな?
残っていると聞いて、脳直で代金を払った俺の目の前にどんと置かれたのは、
植木鉢だった。
それはまるで、松の盆栽を思わせる小さな木。
しっかりした幹からいくつもの枝が伸び、枝から伸びる葉は針状の緑で、見事と言うべき枝っぷりだった。
よく見ると、土からもう一本幹が生えている。
「え……?松茸、は?」
「目の前にあるだろ?マツタケが。
小さいけど松ぼっくりもあるし。
今朝伸びてきたたけのこはもう幹に変わってるから、食うなら明日以降生えてくるやつにしとけよー」
マツタケーー松竹
針葉樹の葉と地下茎を持つ。
松ぼっくりは若い実を蜂蜜漬けにしたり松脂を精製したものを香料として使ったり、
地下茎から伸びてくるたけのこは炒め物や煮物など万能、
らしい。
何その珍妙な植物。
だが、すでに代金を払ったし、最悪たけのこは食えるってことだし、俺はその植木鉢を宿まで持ち帰った。
翌日食べたたけのこも1ヶ月漬けたあとに食べた松ぼっくりの蜂蜜漬けも美味かった。
美味かったけど、食いたかったのはコレじゃねえんだよなあ~~
美味かっただけに余計に悔しい。
和食……
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